THE POLICE/Every breath You Takeイントロ風ギターサウンドメイク
今回はポリスの名曲「Every Breath You Take」のイントロギターサウンドの音作り方法を研究してみたいと思います。
原曲のイントロ(~バッキング)ギターサウンドはブリッジミュートをかけたシンプルなクリーンアルペジオですが、隠し味的にエフェクトを掛けることで美しく雰囲気のあるトーンに仕上がっています。
クリーンなアルペジオサウンドの代表的な曲と言えるので別の楽曲でのクリーンなサウンドメイクにも役立つはずです。
それで設定方法をみていきましょう。
使用機材と接続順
ギター➡コンプレッサー➡コーラス➡ディレイ➡アンプとなり定番機材とほぼセオリー通りの接続順となります。ご使用機種の相性によってはコーラスとディレイを入れ替えてもOKです。綺麗にエフェクトがかかるほうを選びましょう。
では各機材ごとに細かな設定をみていきましょう。
ギター
原曲での使用ギターはリアにシングル、フロントにハムバッカーピックアップを搭載したテレキャスターのようです。イントロではピックアップセレクターを真ん中にしてフロントとリアをミックスしたサウンドだと思われます。
フロントハムのテレキャスといえばキース・リチャーズの使用でも有名なため、それほど珍しいギターという訳ではありませんがやはり全体的にリアシングル、フロントハムのギターは所有していないという方も多いかと思います。
当方もこの記事を書いている時点ではリアシングル、フロントハムのギターは所有していないため今回は2ハム仕様のレスポールでサウンドメイクをしていきました。
2ハム仕様のギターでもフロント&リアのミックスにすることで原曲のサウンドに近づけることは可能だと感じました。参考にしてください。
コンプレッサー
コンプレッサーを使うことで原曲のタイトなサウンドに一歩近づく事ができますが、音色を再現するという意味だけでなくサスティーンを稼いだり音の粒をそろえてくれたりと演奏のしやすさが格段に向上します。クリーンなアルペジオなどでは是非とも隠し味的に使いたいエフェクターです。
今回も当SMALLGARAGE製コンプレッサーCMP-SR1を使って解説しますが別の機種をお使いの場合は各設定値をご自身所有のものと照らし合わせてお考え下さい。
具体的な設定値ですがピッキング後コンプの掛かるタイミングを設定するATTACKは50%で極端すぎない設定です。
ATTACK 50%, SENS 70%, OUTPUT 85%
圧縮の強さとサスティーンを決めるSENSは70%程と少し強めに設定しました。ワンボリュームのコンプなどもありますが全体としては真ん中よりも少しだけ強くかけるイメージでしょうか。
コンプレッサーはブースト効果もあるためハムバッカーなど出力の強いピックアップでは少し歪む場合があります。CMP-SR1では出力レベルを調節できるのでOUTPUTを85%程度へ少しだけ下げています。しかし今回のような80年代初頭の曲ではクリーンサウンドでも若干歪むようなサウンドのほうがアナログレコーディングのテイストを表現できるかと思います。
この辺りはお使いの機種のLEVEL調節が可能であればお好みのポイントを探っていただくのがよいかと思います。
コーラス
コーラスをかけることでクリーンサウンドの透明感をより惹き立てることができます。設定値の目安はコーラスの強さDepthを60%、コーラスの揺れの速さSPEED(Rate)は当SMALLGARAGE製のコーラスCHR-SR1では40%ほどにすると近い雰囲気が出せました。別の機種をお使いの場合は揺れの山から山もしくは谷から谷の間隔をBPM=70前後にすると同じように設定できるかと思います。
DEAPTH 60% , SPEED 40%
どのような機種でも掛かっているようで掛かっていないような、あまり派手すぎないエフェクトにすることがポイントです。
ディレイ
ディレイの残響音がこの曲の哀愁をより際立たせています。といってもあまりエフェクトが判らないように隠し味として使うのがポイントです。
具体的な設定値ですが原曲のディレイタイムは260msecほどのようです。Repeat回数(Feedback)は4回がベストのようです。
隠し味として使うため残響音の音量エフェクトLEVELを50%まで下げます。原音の音量を個別に設定できる機種では最大値に設定しておきましょう。
DRY(原音) 100% , EFFECT(リピート音量) 50%
この設定で原曲と同じような効果が出せるかと思いますが機種によっては残響音の減衰の仕方に違いがあるかもしれません。いったん上記の設定にしたうえでリピート回数を増やしてエフェクトレベルをさらに下げる、もしくは逆にリピート回数を減らしてエフェクトレベルをあげるなど機種によって微調整しましょう。
アンプ
今回はクリーンサウンドであるため使用するアンプはJC-120などクセの少ない定番アンプがよいでしょう。
ここでのアンプ設定は今回使ったギター、2ハム仕様のレスポールのミックスポジション前提で音作りをしています。そのため別仕様のギターやアンプ機種によっても設定値が違ってくるかとは思いますがどのような機材でも音作りのポイントとしては太さはありながらも重くなりすぎない中音域のしっかりしたサウンドにすることです。
そこでまずBASSを20%ほどに下げて低音域をカットします。
音の抜けを良くするためTREBLEは85%ほどに上げました。アンプ機種によって高音がキツくなりすぎだと感じる場合はもう少し下げてください。
GAIN 20% , TREBLE 85% , MIDDLE 65% , BASS 20%
MIDDLEは65%ですが中音域を強調するからと言ってこれ以上上げるとアンプによっては音がこもったりBASSをカットしている分スカスカなサウンドになってしまうかもしれません。
ギター、アンプの機種によってはTREBLEも併せて再度調整しながらMIDDLEを設定していくのが原曲のサウンドに近づくポイントと言えるでしょうか。
クリーンサウンドのためGAINは20%ほどまでにしておきましょう。
この曲ではイコライジングを含めたギターの音色もしっかり合わせ込まないと曲の雰囲気とイメージが違ったものになってしまうのではないかと感じます。やはり機材による違いが大きい部分でもありますので、ここでの解説はあくまでも参考として各自アンプの設定には是非ともこだわって頂きたい部分です。
セッティング全体図
セッティングリスト
ギターアンプ(クリーン)設定
- GAIN ~20%
- TREBLE 85%
- MIDDLE 65%
- BASS 20%
ディレイ設定
- DelayTime 260ms
- REPEAT 4回
- Effect音量 50%
- DRY 100%
コーラス設定
- DEPTH 60%
- SPEED 40%(BPM=70)
- MIX 100%(未使用)
コンプレッサー設定
- ATTACK 50%
- SENS 70%
- OUTPUT 85%
- MIX 100%(未使用)
ギター設定
Pickup Position
- Bridge&Front MIX
Volume
- 100%
今回のようなシンプルなクリーンサウンドの曲でも実際には隠し味的に様々なエフェクトが使われていることが判ります。
クリーンサウンドの音作りの方法としては他にも様々なアプローチがありますが、その一例として今回のサウンドメイク方法をこの曲のイメージとともに覚えておくと今後も様々な場面においてお役立ていただけるかと思います。
また、今回はイントロのクリーンパートを中心としたサウンドメイクの解説のみでしたが曲中ではオーバードライブがかかるパートもあります。しかし、バンド演奏などでこの曲を再現する場合ここに歪みペダルを挟むとこれまでのエフェクトを何台か同時にOFFにする必要があるかと思われます。
そのため歪み用に別のアンプを用意してスイッチャーで切り替えるかアンプが1台の場合はループスイッチャーで歪みペダルを用意した別ラインに切り替えるほうが無難だと思われます。素早く切り替えができるシステムを構築しましょう。
※上記の方法はオリジナルサウンドの完全再現を保証するものではありません。