STEVIE RAY VAUGHAN使用機材

今回のペダルボード及び使用機材を特集するアーティストはテキサス出身のブルース・ギタリスト、スティーヴィー・レイヴォーンです。
HR/HM系ギタリスト全盛の80年代初めとしては異色のオールドテイストなブルースというジャンルから登場した彼ですが、速弾きとはまた一味違う超絶的な演奏技術と豪快かつ骨太なプレイで瞬く間にギターヒーローの仲間入りを果たします。
オーソドックスに思われがちなブルースギターを強烈なプレイで更なる境地へ推し進めジミヘンの再来とも言われました。残念ながらヘリコプター事故により若くして亡くなってしまいますが低迷しつつあったブルースというジャンルに再び脚光を当てた功績はとても大きいといえるでしょう。
正にブルース・リバイバルを代表するギタリストです。
そんなSRVの豪快なサウンドの秘密を機材面から紐解いていこうと思います。
使用ギター
Stevie Ray Vaughanのメインギターとして有名なのは何といっても黒のピックガードに白い文字でSRVと書かれた通称No.1ストラトキャスターでしょう。

ボディーの塗装が剥げていて、いかにも弾き込まれた感があります。
シグネチャーモデルに採用されているSRVの字体になったのはキャリアの終盤あたりからで、それ以前は字体の違うSRVの文字が入っていたようです。
他のストラトと大きく違う点はトレモロユニットのみ左利き用のものが使われておりアームが6弦側に来ている点でしょう。
ジミヘンのスタイルを受け継ぐというのもあったかもしれませんがスティーヴィー自身アームが6弦側にあったほうがしっくり来る感覚があったようです。インタビューで本人が「アームが上部にあったほうが表現力が増す気がする」と語っています。
また、ピックアップはFender純正のものが使われておりリワインドもされておらず完全にノーマルな状態だそうです。
それでいて、どうやってあの豪快なサウンドを生み出していたのか?それには他にも秘密があった訳です。
使用弦
豪快サウンドの秘密は使用する弦の太さにありました。
半音下げではあったようですがghsのカスタムゲージを使用していたという事です。
E(1弦): .013
B(2弦): .015
G(3弦): .019
D(4弦): .028
A(5弦): .038
E(6弦): .058
これはほぼアコースティックギター用のセット、もしくはそれ以上といっても過言ではない太さです。
エレクトリック用ヘヴィーゲージでも通常はドロップチューニング時のテンションを稼ぐためにつかうセットなので、いくら半音下げといえども013からのセットは元々テンションの強くなるストラトでは相当な指先の力と持久力が必要だと思われます。
SRVのサウンドに近づきたい場合は同じセットに拘りたいところですが、チョーキングにも相当な力がいると思います。
いきなり同じセットに挑戦せず、まずはERNIEBALLのSkinny Top Heavy Bottom #2215 (010、013、017、030、042、052)辺りからはじめて徐々に馴れていくと良いかと思います。
先述したSRV本人のNo.1ストラトはFenderの純正ピックアップでしたが、SRVサウンドを再現するために開発されたテキサススペシャルピックアップに交換するのも1つの手段です。
No.1ストラトは弦高もかなり高めにセッティングされていたようなので、それに合わせてピックアップの高さを弦の振動範囲ギリギリまで近づける調節をすると少しでも弦の太さを補えるかもしれません。
初期使用機材
デビュー前後の初期に使っていた機材と接続経路ですがギターの次にはVOX Wah v846が来ています。
(真相は不明ですが、このv846wahは先に音楽活動を開始していたスティーヴィーの兄ジミー・ヴォーンがジミ・ヘンドリックスの前座を務めた際、ジミのwahが不調だったためスティーヴィーの兄のwahと交換したそうです。壊れていても既にスーパースターだったジミのwahが手に入るなら喜んで交換に応じたことでしょう。直せば使えるわけですし。それが後にスティーヴィーの手に渡ったという逸話があるようです。この話が本当であればジミ・ヘンドリックスの意志と魂を受け継ぐためスティーヴィーの元に渡ったといえる訳で凄い話です。真にジミヘンドリックスの再来といえる逸話ですが、確固たる証拠も証明のしようもないことなので、あくまでも伝説的な話としてお考え下さい。)

スティーヴィーレイヴォーンと言えばIbanez TS9の使用が有名ですがデビュー前後の時期はTS808を使っていたようです。
TS9は82年に登場するので、TS9入手後はそちらがメインと言えそうですが、TS808やTS9を直列で2台組み合わせて使う事があったという説もあります。(TS808が2台、もしくはTS9が2台の可能性もあり)
SRVサウンドは歪みすぎず比較的クリアなサウンドが印象的ですがジミヘンのカバー曲の演奏などハードな歪みが必要な場合、会場によってはアンプをドライブさせると音量が大きくなりすぎるためTS系ペダルを2台直列させ前段でのドライブを稼いでいたかもしれません。
TS808、TS9ともに単体ではそれほど歪まないので2台直結も合点がいきます。ちょうどLandgraff Dynamic Overdriveのドライブを上げたようなサウンドが得られるのではないかと思います。
そのほかにジミヘンフリークにとっては重要な機材Uni-Vibeもデビュー時には既に使用していたと思われます。
アンプに関してはジミヘンとは違いFender Vibroverbです。テキサス・ブルースの演奏にはFenderアンプのリバーブやトレモロサウンドも不可欠でありTS系オーバードライブとのも相性も含めVibroverbが最適であったと思われます。
キャリア中盤の機材
つづいてメジャーデビュー以降から80年代後半までの使用機材を見ていきましょう。
もっとも波に乗っていた時期なのでSRVの使用機材と言えば、この時期のものを思い浮かべる方も多いでしょう。
といっても比較的シンプルなペダルボードとなっており基本は初期のものを引き継いでいます。ペダルボード上には次のイラストの様に機材が配置されています。

左からTS9、その右はFenderのロータリースピーカーVibratone用の切り替えスイッチ、さらにその横にはディレイ用のON/OFFスイッチ(Ibanez FS1L)でディレイはこの時期はIbanezのHD-1000というラックタイプを使っていたという説が有名なようです。
最も右側はVOX Wahとなっています。
真ん中上段にループスイッチャーMXR Loop Selectorが見られます。
2回路のループを切り替えられるようですが資料のペダルボード写真では1ループのみ結線されていました。
実際の接続経路は次の図のようになっていると思われます。

ギターからの信号はまずMXRのLoop Selectorに継がれています。
ループのsendからまずVOX Wahへ。その次にTS9が来ています。
TS9からLoopのReturnに戻されているようなのでWah+TS9のループラインと、ループOFFでギターからアンプ直結になるライン、どちらかを選択するシンプルな仕組みだと思われます。
資料によるとループセレクターの次はスプリッターもしくはアンプセレクターで数種類のアンプへ分配or切り替えられていたようです。
この時期のアンプに関しては初期から愛用のFender Vibroverbの他にダンブルSteel String SingerやFender Super Reverb、さらにMarshallのアンプヘッドも見られます。Marshallアンプは広い会場においてドライヴサウンドが必要なジミヘンのカバー曲などで使われたのではないかと推測されます。ヘッドのみのMarshallとSteel String SingerはDumble4x12キャビネット(Electro-Voice製スピーカー4発)で鳴らされていたようです。
Fender製のロータリースピーカーFender Vibratone(ペダルボード上のフットスイッチでON/OFF)は2台用意されていたFender VibroverbもしくはSuper Reverbのどちらかで動作させていたとの説があります。
これらのアンプは必要に応じて使い分けられていたと思われます。
ディレイはいずれかのアンプのSEND、Return間に接続されていたのではと想像できます。
Uni-Vibeが見当たりませんが揺れものとしてはVibratoneがあるので、この時期Uni-Vibeはレギュラーから外していたのかもしれません。
キャリア終盤の機材
短いSRVのキャリアとなってしまいましたが、終盤88年頃にもなると足元の使用機材は中期ごろと比べ徐々に変化していったようです。
まずオーバードライブペダルがTS9からTS10に変わっています。
TS10はTS9と基本回路はほぼ同じですが外観が大きく変わっています。また使用されている一部パーツの抵抗値、コンデンサの値やオペアンプの種類に若干の違いがあるようです。
TS808やTS9と違いTS10は復刻版が販売されたことが無く現在は希少価値のため、かなりの値段で取引されているようです。

その他の変更点としてはループスイッチャーがMXRに変わりスイッチが5つ付いたカスタムメイドのものが導入されています。
TS10以外にもファズペダル、Fuzz FaceやRoger Mayer Octaviaもこの時期は使っていたようなので、それらを素早く切り替えられるようループ回路の多いスイッチャーを導入したのでしょう。
中期使用機材ではレギュラーの機材としては外されていたUni-Vibeが復活しています。Vibratoneとは揺れの質感が違うのとジミヘンサウンドへの回帰も含め再導入したのでしょうか。
このUni-Vibeもループスイッチャーに組み込まれていたようです。
ディレイやエコーも引き続き使用していたようですがHD-1000のままなのか、別の機種に変わったのかは不明です。
アンプは初期、中期から使っているものを引き続き使用しているようです。
以上SRV使用機材を見ていきました。初期のころから一貫して比較的シンプルな機材構成と言えるでしょう。いかにダイレクトに音を出せるかが豪快でパンチ力のあるサウンドの秘訣なのかもしれませんね。
上記の他にも使用された機材はあるかと思いますので、また追記してお知らせできたらと思います。
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