ヴァン・ヘイレン初期ブラウンサウンド再現/You Really Got Me風サウンドメイク(簡易版)
今回は以前特集したヴァン・ヘイレン使用機材①をもとに初期ブラウンサウンドを再現してみようと思います。
とは言っても使用機材の特集ページをご覧いただければ分かるように初期ブラウンサウンドを再現しようにも演奏環境の構築や機材を揃えるだけでも至難の業です。
そこで今回はもっと手軽にブラウンサウンドの雰囲気を体感できるよう当サイトが独自に編み出したアイデアで再現してみようと思います。
ただ当然ながら本物の初期ブラウンサウンドには及ばないかと思われます。あくまで初期ブラウンサウンドの構造を理解するための実験的な内容となりますのでその点はご容赦ください。
取り上げる楽曲はYou Really Got Meです。初期ブラウンサウンドの代表的なこの曲を題材に音作りを解説していきたいと思います。
ユー・リアリー・ガット・ミー簡易再現用機材
今回の方法でReally Got Meを再現するには次のような機材を用意しましょう。
ギター
ギターにはブリッジPUにハムバッカーを搭載したギターを用意しましょう。
初期ブラウンサウンドの再現には初期フランケンと同じシンクロナイズドトレモロのストラトにハムバッカーが搭載されているギターも理想的です。(シンクロナイズドトレモロユニットのスプリングが独特の鳴りを生み出すため。)
ただし、お持ちのストラトがシングルピックアップのみだという場合はパワー不足でブラウンサウンドの雰囲気を出しづらいので、それよりはシンクロトレモロ未搭載でもハムバッカーPUのギターを所有であればそちらを選択してください。
原曲はIbanez Destroyer(シャーク)で録音された可能性もあるのでストラトにこだわる必要はないでしょう。
アンプシミュレーター2台
VAN HALEN使用機材①での解説、エディーの歪みを生み出す接続方法を疑似的に再現するためMarshall 1959モードがモデリングされているアンプシミュレータ(ハードウェアタイプ)を2台用意しましょう。
2台とも同じ機種である必要はありません。Marshall1959モード搭載であれば後段はモデリングアンプでもよいでしょう。
接続と設定は次の項目で解説します。
エフェクター類と設定値
Phase Shifter
ギターソロでONにすると原曲での雰囲気に一層近づけるでしょう。設定値は特集ページでの解説の通りエディと同じ設定でSPEED10%程の薄めにかけるのがポイントです。
エディの接続順を再現するとエフェクトが強くかかりすぎるので特にDepthツマミがあるフェイザーではDepth(エフェクトレベル)を1%最小値まで絞ったほうがよさそうです
Reverb
響き渡るようなブラウンサウンドを疑似的に再現するうえでのキモはリバーブにあるといえます。
アンプに搭載されているスプリング式のRoom系リバーブではなくHALLタイプのリバーブを使うのがポイントです。
今回はアンプシミュレーターを使いますのでアンシミュにHALLリバーブがあればそれを使ってもいいですが細かな設定ができるエフェクタータイプのリバーブを1台用意して細かく設定を煮詰めていくとより再現度が高まるでしょう。
アンシミュのリバーブを使う場合は後段側(モニター用クリーンアンプ直前)のリバーブのみを使いましょう。前段側のリバーブをONにすると後段アンプの歪みでサウンドが濁ってしまいます。
セッティングポイントとしては設定値を一旦70%以上にして比較的強めにエフェクトをかけてみましょう。
あまりにリバーブが掛かり過ぎだと感じる場合はそこから各設定値を削ってみてください。
クリーンアンプ(モニター用)と設定値
(後段がモデリングアンプの場合を除き)アンプシミュレーターだけでは音を出せないのでジャズコのようなクリーンかつフラットなソリッドステートのギターアンプを用意しましょう。
アンシミュを使っているのでチューブアンプである必要はありません。
またブラウンサウンドは高音の抜けが重要になります。パワー部直結のReturn直挿しは入力インピーダンスが低くハイ落ちする傾向にあるので通常のギターインプットに接続しましょう。
設定はクリーンかつイコライザー類も一旦フラットな値にしておきましょう。
今回はこのほうが音作りがしやすく最終的なイコライジングの微調節も可能になります。
各機材の接続順とアンプシミュレータ-の設定
各種機材の接続と設定はVAN HALEN使用機材①のエディーの歪みを生み出す接続方法と接続経路推測①フランジャー、フェイザーの接続位置を参考に設定していきます。
接続順とセッティングリスト
アンプシミュレーター①設定
アンプモード・Marshall1959
- GAIN 100%
- Presence 100%
- Treble 100%
- Middle 40%
- Bass 10%
- Master 100%
キャビネット・4x12
フェイザー設定(ギターソロでON)
- (DEPTH 10%)
- SPEED 10~30%
アンプシミュレーター②設定
アンプモード・Marshall1959
- GAIN 100%
- Presence 0%
- Treble 0%
- Middle 0%
- Bass 0%
- Master 任意
キャビネット・4x12
リバーブ設定
- HALLモード
- E.Level 70%
ギターの次には歪みペダル的な役割となるアンプシミュレーター①が来ます。
エディ本人場合は前段アンプヘッドのスピーカーアウトからダミーロード経由で後段のアンプヘッドへ接続する必要がありましたが、今回はアンプシミュレーターなのでそのような無茶は必用ありません。
現代的な機材を使えるメリットといえるでしょう。
アンプシミュレーター①の設定
このアンプシミュレーター①が前段の歪みとなる重要な部分です。
Marshall1959モードを選択しGAIN(Drive)とOUTPUT LEVEL(Master Volume)ともに100%全開にしましょう。
Marshall1959モードではGAINを上げただけではブラウンサウンドの再現には歪みが足りません。ここでは少々過激ですがマスターボリュームも全開にしてください。
音量は後段のアンプシミュレーター②のマスターボリュームに依存しますので前段のマスターボリュームを上げても音量はあまり変化せず歪みだけが増えていきます。
本来Marshall 1959実機はワンボリューム使用なのでVolumeノブを上げることで歪みを生み出します。ここでは1959のフルアップを再現するためGAINもマスターも全開です。
アンシミュ①のイコライザー類の設定も使用機材特集ページを参考に設定していきます。
それを元にするとPresenceを100%、でTrebleは絞り切ってしまう解説になっていますがアンシミュの場合は機種にもよるかと思いますがTREBLEも100%全開のほうがいいようです。(エディの実機は降圧されていて歪みやすくなっていますがアンシミュでは降圧まで再現できません。TREBLEも全開にしてエッジを立てることで歪みを補正します。)
特集ページの解説のとおりMIDDLEは少し削り気味のほうが音抜けがよくなります。
今回はMIDDLEを40%ほどにしましたが機種によって40%~60%の間で調節するとよいでしょう。
BASSも実機では全開の解説となっていますがアンシミュでは低音が出すぎだと感じましたので今回BASSはほぼカット10%にしました。降圧を再現できない分、高音域を強調したほうがよさそうです。
アンプシミュレーターにはスピーカーキャビネットも再現できる機能があるかと思います。
ここでは本来ダミーロード経由でラインにより接続されるのでキャビネットシミュレートはOFFにするのが自然な再現にも感じますがキャビネットOFFだとエアー感が損なわれてしまう感じがしました。
本来はありえない接続方法ですが(マイクで拾った音を後段アンプへつなぐ構造となる)ここでは前段のアンプシミュレータ①のキャビネットシミュもONにしましょう。このほうがブラウンサウンドに近いサウンドになります。
キャビネットのタイプは4x12がベストかと思われます。しっくりくるものを選んでみてください。このようなあり得ない構成もアンプシミュレーターならではと言える裏技です。
Phaserの位置
ギターソロパートも再現する場合は次のアンプシミュレータ②との間にフェイズシフターを挟みましょう。この位置がエディ流モジュレーションエフェクトを再現するポイントとなります。
この次が本来はスピーカーキャビネットと接続されるパワーアンプ部ですが今回はアンプシミュレーター②で再現します。ここでもエディの実際のセッティング研究が役に立ちます。
アンプシミュレーター②の設定
ブラウンサウンドのような歪みを得るにはアンプシミュレーター②のGAINもMAX100%にする必要があります。
しかし、普通の設定ではやはり実機と同じくノイズが酷い状態となってしまいます。使用機材特集ページの解説通り後段アンプのイコライザー類は0%まで絞り切る必要があります。
実機ではBASSのみアップする解説でしたがアンシミュではBASSだけを上げると音がこもってしまうので今回はアンプシミュレーター②のイコライザー類はBASSも含め全て0%へ絞り切ってしまいました。
これで歪みの量を下げることなくノイズを減らすことができました。様々な説の研究成果でもあります。
アンシミュ②のマスターは全開でなくても既に十分な歪みを得られているかと思います。モニター用のクリーンに設定したアンプのマスターボリュームと合わせて必要な音量に調節して下さい。シミュレーターなので自宅練習レベルの小音量でも広がりのあるサウンドを得られるでしょう。このあたりはアンプシミュレーターの利点です。また、後段のアンシミュ②のキャビネットシミュレートもONにしてください。前段アンシミュ①と同じく4x12タイプがベストかと思います。
種類の違う2機種のアンシミュをお使いであれば仮に一度セッティングしてしっくりこなくても前段後段を入れ替えるともっと上手くブラウンサウンドの雰囲気を出せる場合もあります。すぐにあきらめず試行錯誤してみましょう。
リバーブは歪みの後になるよう最終段に持ってきます。最後にモニター用のアンプへ接続します。
完全再現とはいきませんが、今回のサウンドメイク方法で初期ブラウンサウンドの様々な説やこれまでの研究結果を少しだけでも実証できたでしょうか。アンシミュなので実機とは違う設定が必要な箇所もありますが、実際に試してみるとご実感頂けるかもしれません。
初期ブラウンサウンドに限らず歪みサウンドの作り方には今回の方法だけでなく多種多様な方法論があるかと思います。別の方法もまたの機会に特集したいと思います。