Yngwie Malmsteen使用機材

イングヴェイ・マルムスティーン使用機材

アーティストペダルボード研究、第8回は速弾きギタリストの代名詞イングヴェイ・マルムスティーンを特集したいと思います。

イングヴェイはそれまでの速弾きのレベルを圧倒的に凌駕する超絶速弾きで一躍HR/HM界のスターダムにのし上がります。

彼の登場は、特に速弾きという点において80年代以降のリードギターの新基準を築いたと言えるのではないでしょうか。

イングヴェイのルーツとしては音楽的要素はもちろんですが外見的スタイルなどはリッチー・ブラックモアからの影響が強く感じられます。

そのためイングヴェイのスタイルも前回特集したランディー・ローズのようにロックとクラシックの融合を強く感じさせるジャンルです。

ただイングヴェイは、いわゆるネオクラと言われるジャンルでハーモニックマイナーを多用する辺り、ランディー・ローズのクラシックスタイルとは少し違った旋律を感じるといえるでしょうか。

それはさておき元祖シュレッドギタリスト、イングヴェイの機材や使い方を調査していけば超絶速弾きギターを実現するうえで大きなヒントが得られるかもしれません。

では実際にインギーが使った機材を活動初期から順に見ていきましょう。

ALCATRAZZ時代~ソロ活動初期

スウェーデン生まれのイングヴェイですが渡米後の83年頃ロサンゼルスのローカルバンドSteelerで活動しレコーディング作品の制作にも参加しますが、すぐに脱退。

グラハムボネットのALCATRAZZのオーディションを受け加入します。来日公演等もあり、まだ無名ながら超絶技巧で一躍注目を集め、これをきっかけに世界的に有名なギタリストとなっていきます。

超絶プレイが話題になる中、この来日公演で早速、機材の取材も行われました。では84年来日の際の機材を見てみましょう。

メインギター

まずギターですが活動初期のこの時期から既に彼のトレードマークであるストラトキャスターがメインとなっています。当時からすでにフレットにはスキャロップド加工が施されていたようです。

イングヴェイ・ストラト

画像はシグネチャーモデルのものです。

ピックアップはディマジオHS-3を長年使用していたことで有名ですが、デビュー当時のはディマジオFS-1が搭載されていたとの説が有力です。

86年初頃のインタビューでは弦にはERNIE BALLのレギュラーゲージ.010のセットを使用していると語っていたようです。ピックはフェンダー製のエクストラヘヴィーとのことです。

アルカトラズでの来日公演でも複数台のストラトキャスターが使用されていましたが基本的には上記のセットアップだと思われます。

ペダルボード’84

ペダルボードも早速見てみましょう。次の図は84年来日時のペダルボードをイラスト化したものです。

インギー・ペダルボード1984年

84年来日時の取材写真では配線は分かりにくく不明な点が多いですがループスイッチャーも使われておりペダルボードの配置が接続順ではないようです。

左下からA~Hの記号で見ていくと次のような機材が使われています。

A 「DOD OVERDRIVE PREAMP 250」

DOD250 Overdrive Preamp

イングヴェイの使用で一躍有名となったオーバードライブペダルが、このDOD250です。現在でも販売されているオーバードライブですが、この時期イングヴェイ自身が使用していたのは初期型の紺色のケースのもので、内部のオペアンプなどは絶版のものが使われてるでしょうから現行品とは若干の違いはありそうです。中古市場では 十数万円程で取引されている様です。しかし、シンプルな回路のオーバードライブなので現行品でも音のキャラクターそのものに大きな違いは無いはずです。

B 「MXR Phase100」

MXR Phase100スクリプト

定番のフェイザーMXR Phase90よりも幅広い設定が可能なPhase100です。インギーが使用していた当時はスクリプトロゴの仕様です。アルカトラズのライブではコードストローク的なバッキングの箇所でフェイザーがかかっているようなサウンドがあったのですが比較的短い時だったのでハッキリとは判別できませんでした。ごく薄めにかけていたのかもしれません。

C 「ARIA FL-10 フランジャー」

Aria FL-10フランジャー

ARIAが当時販売していたフランジャーです。ARIAのエフェクターは現在では製造されておらずレアな一品と言えます。ほかのフランジャーでも代用できるでしょうが、べらぼうに高い値段で取引されているわけでは無いようなので探してみるのもいいでしょう。アルカトラズのライブでは曲のイントロの一節で少しだけつかったり独演コーナーなどで使用し見せ場を作るような使い方だったと思われます。

D 「BOSS OC-2 オクターバー」

BOSSオクターバー OC-2

こちらも製造終了品ですがサウンドは現行のBOSS OC-5へ受け継がれています。後のソロ作品のリードプレイでオクターバーが使われている曲もあるためアルカトラズのライブでもソロパートで使われたと思われます。クリーントーン時に厚みを出すために使用しているのでは?というサウンドもライブの一場面で聴こえました。

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E 「ループスイッチャー」

このスイッチャーはハンドメイド品なのか何かのエフェクターのケースを流用しているのか詳細は不明です(ケースはモーリーの古いABスイッチャーに似ています)が他では見られない機種であることから1点物の可能性が高そうです。段差になっているケースの各段1個づつ計2つのスイッチが見られます。

84年の来日時にはボードに対して横向きに設置されており、分かりにくいですがケースの横側面左右にそれぞれSNDとRETの表記のジャックがペアで配置されているのとスイッチャー正面から見て裏側側面にもSEND,RETURNジャックがあるようです。このことから3つのループを切り替えられるのではないかと思われます。

左からECHO、 OCT、FLGの小文字の上にLEDライトがあるのでループの選択を視認できるようになっているのでしょう。

イングヴェイ・ループスイッチャー84

写真をヒントに独自にイラスト化したものです。

ケースサイド右側面にはinputらしき表記のあるジャックと反対側、左側面にはoutputらしきジャックがあります。このINPUT、OUTPUT間にあるスイッチを押すとONとなりループ側が選択され、上段のループ切り替えスイッチが有効になるのではないかと思われます。OFFではループがスルーされアンプ直結等になるものと思われます。

しかし、そのスイッチ付近にも大きな文字でOCTと書かれており、ループ切り替え用のスイッチ側にはFLGの文字が手書きで追記されているのが不思議に思うところです。

おそらくオクターバーとフランジャーを瞬時に切り替える必要があり、このように分かりやすく追記したのだと思われますが、詳しくはわからないところです。

そこで当サイトで独自に推測してみたのですがスルー側のからループ側をONにした際は最初にOCTのループが選択されるのではないかと考えてみました。

ループ切り替えスイッチにFLGの大きな文字が書かれているのはループONで最初にOCTが選択されますが、次にループ切り替えスイッチを踏むと次はFLGループに切り替わるのではないかと推測しました。(さらにもう一度ループスイッチを押すとECHOループが選択される)フェイザーとコーラスが、どのループに入るのかは、その日のライブの演奏の順序や演出の都合で変わっていたのではと考えてみました。

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F 「Jim Dunlop cry baby Wah」

アルカトラズでのライブではいかにもWahペダルな音の変化が聴こえるパートはなかったのですが、半開きなど固定して使っているのでは?というサウンドが幾つかの場面で聴こえました。

もしくは可変させるとしても、ものすごくゆっくりとした変化で操作していたと思われます。

Wahペダルの位置に関しては当日の資料には載っていないため正確にはわからないのですが、Wahペダル使用曲でのエフェクトのかかり具合からすると比較的ナチュラルなサウンドなので歪みペダルDOD250の前、ギターの直後ではないかと思われます。

しかし、後の時代の機材資料ではWahペダルもループスイッチャーに組み込まれており曲によってはオーバードライブと前後入れ替えも可能と思われます。

ただ、唯一2004年頃のツアーのみ機材セッティング資料ではWahペダルが明確にギター直後の先頭に配置されています。その後はまたループスイッチャー内に戻っていますが基本的にはナチュラルなワウの効き具合となるギター直後、先頭が初期でも最有力ではないかと思われます。

G 「BOSS CE-1 Chorus」

コーラスの名機CE-1です。アルカトラズのライブではクリーンサウンドでのイントロアルペジオなどでコーラスが使われています。

H 「Roland DC-10 Analog Echo」

ローランド製のアナログディレイです。

アナログディレイで有名なエコープレックスEP-3なども通しただけで音が良くなるなど愛用のアーティストが多いのですがイングヴェイもDC-10を隠し味的に使っていた可能性もあります。それは翌85年のペダルボード上の接続から推測しました。

隠し味としてだけでなくライブ中のイングヴェイ独演コーナーのラストの見せ場として、ペダルボード上のDC-10と思われるツマミを直接操作しながらディレイタイムを徐々に短くしていき音を響きわたらせる演出がみられました。また、曲中のリードプレイの終わり際にパっとディレイを利かせ余韻を残すような瞬間的な使い方もみられます。

「Moog Taurus」

ペダルボードの左に置かれているのがリッチー・ブラックモアも使っていたペダル操作式のオルガンMoog Taurusです。ギターと接続されるわけではなく単独の楽器として曲のイントロで使用していました。

次のイラストはMoog Taurusも含めたインギーの足元全体イラストです。

イングヴェイ84ペダル類全体図

ペダルボードの左側にMoog Taurusが配置されています。ボード外には他にもRoland DC-10用のフットスイッチも見られます。

そして当時の写真をよく見てみるとスイッチャーからコーラスBOSS CE-1へのみ緑色のシールドケーブルで接続されており経路がハッキリわかりました。CE-1のモノラルアウトから出力されているのでスイッチャーのリターンへ繋がっているようです。CE-1の前段に何が接続されているのかはわかりませんでした。

もう一点、スイッチャーのSENDの一つとMXR Phase100のINPUTが接続されているのも判別することができました。こちらもPhase100の次に何が来るのかはシールドの取り回しが複雑で写真では判別不能です。

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そこで、さらに翌85年のペダルボードの配置を見てみましょう。↓

Rising Force~

ペダルボード’85

85年にもペダルボードをとらえた写真がありました。次の図も85年のペダルボードをイラスト化したものです。

イングヴェイ・ペダルボード85

84年とは機材の配置も変わっています。Wahペダルが左側へ移動しオーバードライブが右側へ移動しています。Moog Taususもペダルボード右側へと移動されていました。84年時と同様この配置が接続順ではないのハズなので経路を考える場合は注意が必要です。

BOSS CE-1があった場所には黒い覆いがありCE-1が見当たりませんが、その下に84年と同じように設置されているのかもしれません。AriaフランジャーFL-10も元の画像が不鮮明で有るのか無いのかわかりませんが、スイッチャーの表記はFLGのままなので別の機種に置き換わっているかもしれません。ボード外のRoland DC-10用のフットスイッチも右側に移動になっているのとボード内、本体の真下にもう一つ増えています。エコーを1台増設したのか予備用スイッチの可能性もあります。

初期型DOD250の隣には現行品と同じ黄色のDOD250が見られますが、これはどこにも接続されていませんでした。おそらく予備として置いていたのではないかと思われます。スイッチャーの向きも84年時とは変わり縦置きになっています。(ここから色々判別できました。)

上記イラストの元の写真にはカット違いがあり接続方法が多少判別できました。既にアルカトラズを脱退しソロとしての活動なので演奏曲も変わっており接続にも違いがあるかもしれません。それでも84年のペダルボード写真では判別できなかった接続順も一部見ることができました。

そして、ここから判明した重要なポイントはRoland DC-10の原音アウトからオーバードライブDOD250へ接続されている事です。そして、この2台ともループスイッチャーのSEND、RETURN内に組み込まれている事を発見しました。

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接続ルート考察

84年のコーラスやフェイザーの接続順、ループスイッチャーの機能、そして85年のペダルボードから判明した点を総合すると次のような接続順と切り替えが行われていたのではないかと想像してみました。(DC-10のウエット、ディレイ音は別のアンプで鳴らすと思われます。)

ループ①OCT

スイッチャーの解説でも説明しましたが、ループスイッチャーのIN、OUTダイレクト側からループをONにすると毎回このoctaveの入っているループ①が選択されるのではとの想像です。(電子スイッチ化されているため)

ギター→Wah→(ループSWのinput→SEND①)→MXR →OCTAVE→BOSS CE-1?→(Return①→ループSWのoutput)→アンプ

先述の説明の通りCE-1のモノラルアウトからスイッチャーのReturnへ戻っているのが84年のペダルボードで確認できます。

ループ②FLG

ループ切り替えスイッチには大きな文字でFLG表記のあるため、これを押すとループ①からフランジャーが接続されているループ②(小文字FLG表記のあるLEDが点灯)に切り替わるのでは?との想像です。

この場合は

ギター→Wah→(ループSWのinput→SEND②)→MXR Phase100? →フランジャー→(Return②→ループSWのoutput)→アンプ

というルートとなります。こちらも先述の説明と同じですが84年のペダルボードでSENDからMXR Phase100へつながれているのが確認できます。

ループ③ECHO(メインループ)

リードやバッキングで使うメインのドライブサウンド用DOD250が入ったループ③がメインループです。先ほどの解説の様にアナログエコーRoland DC-10の原音アウトからDOD250へ接続されているので真ん中ECHOの表記のLEDが点灯するループをループ③(メインループ)とします。

ギター→Wah→(ループSWのinput→SEND③)→Roland DC-10原音アウト→DOD250オーバードライブ→(Return③→ループSWのoutput)→アンプ

これがイングヴェイが最も多く使うリードギターやバッキング用メインループだと思われます。

メインループ③以外はオーバードライブが無いですがDOD250は単体では、それほど歪むものではありません。なので特にメインアンプはオーバードライブが無くてもある程度歪むようにセッティングされていたと思われます。そのためループ①②ではアンプの歪みのみとなります。octaveやフランジャーは後段に歪みを持ってきてもOKなエフェクトです。

コーラスはクリーンサウンドに掛かっている印象でしたのでコーラス使用時はギター本体のボリュームを絞ってクリーンなコーラスサウンドを演出していたのではないかと考えました。

MXR Phase100?or BOSS CE-1?とクエッションマークなのはループ①②どちらのループ内の可能性もあるためです。それでもアルカトラズのライブではoctaveとCE-1を歪みサウンド時だけでなくクリーンサウンドでも使っているのでは?と感じたので同じループにしたほうが違和感はないのではと思いますが、どうでしょうか?同様に揺れもののフランジャーとフェイザーも同じループに入れるのが自然に感じます。ただこの組み合わせは演奏順の都合でステージ毎に入れ替わっていた可能性も大いにあります。

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アンプ

メインアンプに関してはキャリアを通じて愛用していくMarshall 1987 MkII 50Wアンプヘッドの使用が有名です。100Wの1959SPLと同様の2チャンネル使用のアンプでイングヴェイはチャンネルリンクにより高音特性、低音特性の両チャンネルをミックスして使っていたようです。

マーシャル1987 50W

チャンネルリンクができない新しい世代のマーシャルだと音が細くなってしまうとインタビューで語っていたため特にローチャンネルの存在がイングヴェイサウンドの要と言えるかもしれません。スピーカーにはセレッションG12 25W 4×12のキャビネットも含めて3段積みでイングヴェイはアンプを多数ステージ上に並べていたのは有名です。

この時期はメインアンプとそれ以外もMarshall 1987 MkII 50Wが使用されていたようです。ウェット用アンプへはRoland DC-10のエコーアウトやBOSS CE-1、ARIA FL-10のステレオアウトから接続していたのではと推測されますが、あくまでも当サイトの憶測です。

以上がイングヴェイ初期の使用機材です。接続経路など様々な説があると思います。あくまでも当サイトの独自の見解ですので参考として、ご自身の機材セッティング等にお役立ていただければと思います。

翌86年ソロ2、3作目前後からは更に機材がアップデートされていきますが、それはまたの機会に追記していきたいと思います。お楽しみに!

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