SANTANA/哀愁のヨーロッパ風サウンドメイク
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今回はラテンロックの雄サンタナの名曲Europeを題材に音作り方法を研究してみたいと思います。
この曲でのサウンド、ギタープレイの特徴は何といっても永遠と続くかのような伸びやかなロングトーンではないでしょうか。
このようなロングトーンを実現するためにいかに長くサスティーンを伸ばせられるか心掛けて機材選択とセッティングをしていきます。
サスティーンを伸ばすことはロングトーンのみならずリードギターでの演奏の滑らかさや音の操作感を向上させるなどプレイ面での補助として欠かせない要素でもあります。
インストギターの代表的な一曲でもあるのでリードギターにおけるサウンドメイクの基礎を学ぶことができるでしょう。
サンタナEurope再現用おすすめ機材とセッティング
哀愁のヨーロッパを再現するにあたっては次のような機材があるとよいでしょう。
ギター
今回の曲のようなロングトーンを実現するためにはギター本体が重要な要素となります。
サンタナ本人は当時、共同開発したともいえる専用のYAMAHA Buddha SG(175B)を使用していましたがこのギターにはブリッジ部分に重い金属の塊、サスティーンブロックが搭載されており音を伸ばすためのカスタマイズが施されています。
同じ仕様のギターがYAMAHA SG-2000として市販されたりBuddha SGも限定で復刻モデルが販売されていました。
ほかにもSG-2500などサスティーンブロック搭載モデルも出ていたようですが、どれも生産終了のため中古で探すしかありません。
YAMAHA SG-175B
これらのギターがベストではありますが入手しやすい現行のYAMAHA SG-1820(サスティーンブロックは搭載されていないようです)や同じくマホガニーボディかつハムバッカー搭載のレスポールなど仕様が似ていてボディが厚く重量のあるギターをできれば用意したいところです。
その他のギターですが、ストラトキャスター等はYAMAHA SGやレスポールと比べるとボディが軽かったり弦のテンションが強めであるなどサスティーンを稼ぐという点に限ってはどうしても不利になります。
また、サンタナ本人が現在メインで使っているPRSもYAMAHA SGに比べボディーが薄く重量も軽いようでロングトーンプレイが特徴の哀愁のヨーロッパだけに焦点を当てると最適ではないかもしれません。
ギブソン系のフライングVやSG、エクスプローラなども同じことが言えそうです。
やはりYAMAHA SGやレスポール等、重く厚めのギターがベストですがそれ以外のギターの場合は別の手段でサスティーンを伸ばす方法を研究してみたいと思います。
今回は当方自身が所有しているレスポール・スタンダードを使用してサウンドメイクを進めていきます。
ギター本体のセッティングですがライブ映像を確認するとサンタナ本人はこの曲では始めから終わりまでピックアップセレクターを上側にしたまま演奏しているようです。
ブリッジ側だと音が軽くなるのと弦の振幅の付け根に近いのでロングトーンを得るには不向きだと思われます。
フロントPUを選択
そのためレスポールでもフロントピックアップを選択しました。
アンプ
ギターの次はアンプについてみていきたいと思います。
最適なアンプとしては当時サンタナ本人が使用していたメサブギーの初期型Mark Iや本人の要望により当時の仕様を復刻した限定販売のシグネチュアーアンプKing Snakeなどがあります。
熱心なファンの方で忠実な再現を目指す場合はこれらのアンプがベストですが現在はどちらも中古でしか手に入らないのに加え価格もそれなりにしますので今回はアンプシミュレーターとオーバードライブペダルを組み合わせてもう少し手軽に原曲のギターサウンドを再現してみようと思います。
今回使用したアンプシミュレーターにはMesa/Boogie Mark1のモデルは入っていませんでしたがMark llc + Drive Channelがありましたので、このモードを使って音作りを進めていきます。
そしてアンプシミュレーターをギターアンプのメインINPUTではなくエフェクトループ用のリターン端子に直接接続しました。
これによりパワーアンプ部に直結となるのでギターアンプの機種の違いによる音のクセを極力回避することができ狙い通りのサウンドを再現しやすくできます。
今回のアンシミュのMark llc + Drive Channelモードでのセッティングですが、まずGAINを50%ほどにしてクランチ程度に軽く歪ませます。
この曲ではピッキングやギター本体のボリューム操作によって音に表情をつける事が大変重要になります。
この段階ではあまり歪み過ぎないよう設定するのが大切です。
つづいてイコライザー類の設定ですが原曲のような中音域の滑らかさを出せるよう設定していきます。
まず音の抜けをよくするためTREBLEを80%、中音域が主体となりますのでMIDDLEも80%に設定します。
アンシミュ設定イメージ図 GAIN 50% , Treble 80% , Middle 80% , Bass 40%
ギター本体のピックアップポジションがフロントPUのためBASSを上げすぎると太り過ぎなサウンドになってしまいますが、逆にカットしてしまうとリードプレイにおけるハイポジションでのチョーキングや音を伸ばした際に蚊の羽音のような貧弱なサウンドに陥ってしまいがちです。
そのため今回はBASSを40%ほどにしましたが、この位置を目安にご自身の使用環境により微調節するのがよいかと思います。
そのほかアンシミュにReverbが付属していましたので20%ほどに設定しました。
オーバードライブ(ブースター)
アンシミュのMark llc + Drive ChannelモードでGAINを50%に設定しましたが、このモードでの50%ではクランチ程度の歪みなのでドライブ感や音の伸びが足りません。
しかしこの曲では前述のようにピッキングの強弱やボリューム操作により音に表情をつけることが大変重要なのでアンプ側で歪ませすぎると細かなニュアンスが操作できなくなってしまいます。
そこで今回はオーバードライブをブースター的に使ってアンプ側のクランチの歪みをプッシュすることによって全体のドライブ量を稼ぎます。
入力側を強くすることでドライブさせつつ必要に応じてクリーンなトーンも出せる反応の良いセッティングが可能になります。
今回使用したオーバードライブはBOSS SD-1です。
歪みによってサスティーンを伸ばすには最適のオーバードライブです。使用アーティストも多く今回の曲に限らず様々な場面で使えるので1台持っておいて損はないはずです。
Drive 20% , TONE 60% , LEVEL 100%
アンプシミュレータのMark llc + Drive Channelモードとの組み合わせを考慮した結果、哀愁のヨーロッパのマイルドで滑らかなリードギタートーンの再現にはBOSS SD-1をブースターとして使うとかなり良い結果が得られました。
SD-1の具体的な設定値ですがブースターとして使うためDRIVEは20%以下に絞り気味にします。
これ以上DRIVEを上げるとピッキングニュアンスが出しにくくなるので、あくまでもアンプのクランチをプッシュしてトータルでドライブ感を出す仕組みです。
TONEは60%ほどが良いかと思います。
使用ギターやアンプの違いによっては、もっと上げたほうが音の伸びや音抜けがよくなりそうな感じがするかもしれませんがハイポジションでの演奏時に線の細い痩せた音になってしまうのは絶対に避けたい所です。
TONEの上げすぎには注意しましょう。
LEVELは全開100%でブースターとしてアンプのクランチをプッシュアップします。ギター側のボリュームやピッキングの強弱でドライブ感や音量をコントロールしましょう。
ワウペダル
曲の終盤でワウを使う場面がありますので原曲に忠実なコピーを目指す場合は用意しましょう。
接続位置はギター直後の先頭がベストです。
歪みペダルの後につなぐとワウの効きが強くなり過ぎます。
必要な場面でONにしましょう。
コーラス
曲の中盤ではクリーントーンによる繊細な場面に展開が変わりますが、ここでは揺れものエフェクトも加わっています。
コーラスを少し速めの揺れに設定するとかなり近い雰囲気が出せるかと思います。
揺れの速さの設定値SPEED(Rate)は60%程が目安ですが機種の違いにより数値も変わってくると思われます。
目安としては揺れの間隔をBPM=210~220、時間で表すと270msec~280msec前後に設定すると原曲の雰囲気が出せるでしょう。
Depthは50%ほどの少し薄めに設定します。
DEPTH 50% , SPEER(Rate) 60%
Depthをあまり高く設定すると音程が狂ったような気持ちの悪いエフェクトになってしまうので注意しましょう。
コーラスも必要な場面のみONにします。
(コンプレッサー)
コンプレッサーはロングトーンが上手く再現できないと言う場合にのみ最終手段として使用します。よって、ギター本体でナチュラルなサスティーンが得られるのであればコンプは必要ありません。
コンプレッサーを使うと電子的にサスティーンを伸ばすことはできますがノイズも増えてしまううえ、この曲で重要なピッキングニュアンスも均一化されてしまいます。
この曲ではコンプレッサーの使用はあまりお勧めしません。
どうしても使用するギター本体のサスティーンがイマイチだという場合はロングトーンの場面でのみ部分的にONにします。
設定は極力後から圧縮がかかるようATTACKのタイミングを最も遅く設定します。
ATTACK 最小 , SENS 80%
サスティーンは伸ばしたいですが圧縮は少なくしたいところなのでSENSは最大ではなく80%程にして可能な限り自然な出音になるよう設定しましょう。
ご自身の使用するギターのサスティーンがイマイチだと感じている場合でも音量を上げることによって十分補える可能性があります。
本当にコンプが必要なのか実際の環境で試して使用の是非を判断しましょう。
接続順セッティング全体図・ポイント
接続順ですがギター➡ワウペダル➡(コンプレッサー)➡オーバードライブ➡コーラス➡アンプシュミレーター➡ギターアンプ(リターン直)という順です。
セッティングリスト
アンプシミュレーター設定
アンプモード
MESA/BOOGIE MKII
- GAIN 50%
- Treble 80%
- Middle 80%
- Bass 40%
- Reverb 20%
コーラス設定
(クリーンパートでのみON)
- Depth 50%
- SPEED(Rate) 60%
オーバードライブ設定
BOSS SD-1
- Drive 20%
- Tone 60%
- Level 100%
ワウ
必要な場面でON
(コンプ設定)
不要な場合は未使用
- ATTACK 最小
- SENS 80%
ギター設定
Pickup Position
- Front
Volume
- 50% ~ 100%
ギターの次の先頭には前述の通りワウペダルを持ってきます。
どうしてもコンプレッサーを使うという場合のためにワウの次に配置しました。
同時には使わない予定なのでコンプが先頭でも問題はないかと思いますが実際に試してお使いの機材同士の相性が良いほうを選びましょう。
コンプレッサーが必要ない場合は外してしまいましょう。
この次には歪みペダルとコーラスの順でセオリー通りです。
アンプ側はクランチ程度の設定であるのとコーラスを効かせる場面では歪みを抑えるので今回の設定であれば、揺れものペダルを直列で接続しても音の濁り等は無く全く問題ありませんでした。
ロングトーンの再現方法、コツ
哀愁のヨーロッパのようなロングトーンの再現には実際のところ機材のセッティングだけで何とかなるというものでもありません。
この曲のロングトーンの再現のコツとして最も重要なのは音量を上げてフィードバックループを得ることでしょう。
フィードバックをうまく得るためには音量だけでなくギター本体とアンプとの位置関係や向きにも左右されます。
ギター本体がサスティーンを得やすいタイプのギターでアンプとの位置関係や向きさえ決まればある程度の音量で半永久的なフィードバックによるロングトーンを鳴らすことが出来るはずです。
もちろんコンプレッサーも必要ありません。
トライアンドエラーでアンプとの距離や向きを実験しながらベストな立ち位置を事前に見付けておきましょう。
フィードバックループを起こすため音量を上げる必要があればアンプ本体の音量マスターボリュームを(アンシミュをリターン直で接続している場合はアンシミュのボリューム)を上げるだけですがアンプに必要以上に近づくと位置関係が崩れてしまいます。
そこでギター本体のボリュームを半分ほどに下げた状態を基本として音作りをしておきロングトーンの場面で必要に応じて手元で最大音量を操作するのも一つの手です。
ただし、音量を上げすぎてフィードバックループではなくハウリングの状態になってしまわないよう注意が必要です。
音を伸ばしてみて途中から押弦したポジションの音程と明らかに違う周波数成分が含まれ出したら要注意です。
ハウリング対策としては音量調整と立ち位置の見直しやアンプのイコライジングももう一度見直してみましょう。
クリーン、コーラス場面での機材操作
曲の中間部では抑制を効かせたクリーンなパートへ移行しますが今回はあくまでもアンシミュのため本物のチューブアンプとはギター本体のボリュームとの追従性(レスポンス)も少し違いがあるかと思います。
そのためギター本体のボリュームだけでクリーンサウンド近くまでもっていくにはピンポイントで正確な位置へコントロールノブを下げる必要があります。
追従性が良くアバウトな操作でもクリーン~ドライブの変化を出しやすいのであれば別ですが演奏中に正確な位置へ瞬時にボリュームノブをセットするのは本体に目印がないので結構難しいです。
そこで今回はオーバードライブを使っているためクリーンの中間部分では単純にSD-1をOFFにするだけの方がシンプルかつ瞬時に音色を変えられ原曲にも近いサウンドが再現できるのではないかと思います。
アンシミュ側はクランチ程度の歪みなのでSD-1をOFFにしてしまえば後はピッキングの強弱でクリーンなパートを十分表現できます。
ほぼ同時にコーラスをONにする必要がありますが焦らず順に操作すれば問題ないでしょう。
以上、哀愁のヨーロッパ風の音作り方法をご紹介しました。
今回はアンプシミュレーターを使ってのサウンドメイク方法の解説でしたがボリュームレスポンスなど細かな点は実機のチューブアンプとは完全に同じとは行かないまでも、最近のシミュレーターは性能も良くかなり近いサウンドが得られます。
既存のアンプ全てを手に入れるのは不可能とも言えますし、仮にオリジナルと同じ機材を使っても完全に同じサウンドになる訳ではありません。
出音が近いのであればアンプシミュレーターに限らず様々な機材を組み合わせて原曲に寄せるのも一つの手段です。
ご自宅にエフェクトループ用のリターン端子付きアンプとMark llc + Drive Channelモードのあるアンプシュミレーターをお持ちであれば今回ご紹介したセッティング方法を参考に音作りをしておき、そのままスタジオのJC-120等のリターン直に置き換えてもほぼ同じサウンドを出せるでしょう。
※当ページの内容はオリジナルサウンドの完全再現を保証するものではありません。