VAN HALEN使用機材①
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今回は80年代以降のHR/HM系ギターサウンドの基礎を築いたと断言できるスーパーギターヒーローEdward Van Halenの使用機材を初期から順に研究していこうと思います。エディのギタープレイはタッピングや速弾きなど演奏面においても当時のギタリスト達に多大な影響を与えましが、彼の生み出すギターサウンドそのものが大変革命的なものであった事はロックファンの皆さんはご存じかと思います。
特にファーストアルバムでの雷鳴のごとく炸裂するようなギターサウンドはブラウン・サウンドと呼ばれ当時としては大変衝撃的なものだったことでしょう。今でも理想であり究極のHR/HMギターサウンドの一つでありつづけています。
フィードバック音が響き渡りアーミングなどの派手なプレイでギターが唸るという一般の人々がイメージしそうなHR/HMギター像は60年代後半に先人ギタリスト達が生み出しエディによって完成されたといっても過言ではないでしょう。と同時にこのブラウンサウンドを起点にそれ以降さらにHR/HMギターサウンドが発展していったとも言えるかと思います。
そんな皆が追い求める究極のサウンドですが、本家ブラウンサウンドは企業秘密的な側面があるためエディ本人のインタビューやライブ演奏時の機材などを参考にこれまでに様々な研究や再現が行われています。そのため既にご存じの点もあるかと思いますがブラウンサウンドはまだまだ完全には解明しきれていないはずです。
残念ながら2020年にエディ本人が亡くなってしまったため完全に解明されることはないのでしょうが。
そこで当ページでは過去の資料を総合しつつ独自の視点も加えながら研究していこうと思います。少しでもブラウンサウンドに近づく、もしくはご覧の皆さん一人一人のオリジナルサウンド作りの参考にしていただければと思います。
「ヴァン・ヘイレン」デビュー前後の使用機材
エディのギターサウンドは時代とともにアップデートされていくのですがブラウンサウンドというのは正にファーストアルバムでのギターサウンドそのものでもあるかと思います。
とはいってもエディの奏でるサウンドはいつの時代もブラウンサウンドであることに代わりません。時代ごとに機材は変わるのですがサウンド構築の基本哲学は変わっていないはずです。
そのため後年のサウンドシステムも初期のサウンドを解明するのに役立ちます。それらも踏まえながら最も重要なデビュー前後の機材と構成を見ていきたいと思います。
ギター① オリジナル 白黒ストライプFrankenstrat
まず、大変重要なエディの使用ギターですがファーストアルバムレコーディング前後はアルバムジャケットにも登場する白のボディーに黒のストライプが入ったストラトキャスタータイプです。
ヴァン・ヘイレン公式ブランドによる再現モデル EVH Striped Series white with black
初期フランケンストラト(オリジナル1978年頃のスペック)
- Body アッシュ材
- Neck メイプルラージヘッド
- Fretboard 貼りメイプル21F フラット加工 ジャンボフレットに打ち直し
- Pick Up P.A.F.1個のみ(Gibson ES-335よりリワインドされたものを移植)
- 1ボリューム Gibson Les Paul の500KΩポットを移植 (トーン回路除去)
- シンクロナイズドトレモロ Fender製
- ナット ブラス製
- ペグ シャーラークローム
フェンダー製のオリジナルストラトキャスターではなくギター工房でアッシュ材のボディーとメイプルのラージヘッドネックを購入して自ら組み上げていったギターとなります。
ブラウンサウンドはこのギターから誕生したと言えますが激しいアーミングプレイのイメージが強いエディにしては通常のストラトと同じシンクロナイズドトレモロユニットFender純正品がこの当時はまだ搭載されていました。
というのもロック式フロイドローズはまだ開発途中だったためですが、実機が完成するとすぐさまエディは初期のフロイドローズトレモロユニットを導入します。しかしフロイドローズかシンクロナイズドトレモロかではサウンドに違いが出るためファーストアルバムレコーディング時はまだシンクロナイズドトレモロであったことは重要なポイントでしょう。
トレモロユニット以外は通常のストラトキャスターとは大きな違いがあります。まずハムバッカーピックアップがブリッジ側に1つだけ搭載されている点でしょう。このハムバッカーはGibson ES-335に付いていたP.A.F.ハムバッカーをリワインドして取り付けたものと言われています。
ストラトとES-335では弦間の幅に違いがあるためピックアップを少し斜めにして取り付けることで各弦がポールピース上を通る形になっています。ピックガードはエディが自ら切り取った黒のアクリル板ですがピックアップはピックガードではなくボディ側に直付けされています。
このピックアップも公式EVHからレプリカモデルが単品で販売されています。
自分でリワインドするのは大変なうえ本物との比較が不可能なので初期ブラウンサウンドを追求する場合こちらを採用する方がお手軽で再現性も高いでしょう。
つづいてコントロール類ですがトーン回路による高音域の減衰を極力避けるためトーンそのもを省略したボリュームコントロール1つのみとなっています。(ノブはTONE表記のものが使われていますがボリューム機能です。)トーンを省略することでピックアップからの信号がダイレクトに出力されます。資料によるとこのトーンポットには55年製ギブソンレスポールJr.に使用されていた500KΩのものとされていますが通常ストラトに使う250KΩよりも抵抗値が大きなものを採用しています。
Volumeも全開時は数百キロという大きな抵抗値をはさむとはいえアースと接するので極力信号をロスしないよう大きめの抵抗値にしたと思われます。ボリュームも取り除いてしまえば完全直結になるのですが音量調節ができないとさすがに不便だったと思われます。(2連ポットがあればトーンカットのように全開時ボリューム抵抗カットもできるハズですが、そのような改良が施されていたのでしょうか?)
つづいてネックを詳しく見ると貼りメイプルで21フレット仕様とのことですが、フレットボードはほぼ水平になるように削られギブソンギターに採用されるジャンボフレットに打ち直すなどの加工が加えられているようです。
ギターを裏側から見ると初来日公演当時の写真ではトレモロスプリング3本のシンメトリック(左右対称)三本掛けでした。
初代フランケンを再現したモデルでは真ん中のスプリングが外された2本掛け仕様となっています。
ライブではアーミングを多用するためスプリングを増設した可能性もありますがファーストアルバムレコーディング時のスプリング本数は不明です。
この初期フランケンストラトはファーストレコーディングと初来日公演、そしてセカンドアルバムレコーディングでもこの仕様で使われたと思われます。
しかし、その後徐々に変更が加えられエディの代名詞といえる赤色に塗装されたボディに白のストライプと初期の黒色ストライプが交差するあの有名なルックスへと変貌し最終的にはフロイドローズが搭載されることになります。2度目の来日公演前では既に赤白黒フランケンに変身していました。
それでもファーストアルバムやセカンドアルバムレコーディング時はまだ初期型のフランケンだったことはデビュー前後のブラウンサウンドを追求するうえで重要な点といえるでしょう。
ギター② Ibanez Destroyer 2459 "Shark"
ファーストアルバムレコーディング前後の初期VAN HALENではもう1本有名なギターがあります。You Really Got Meのプロモーションビデオにも登場する赤のボディに白のストライプのエクスプローラータイプのギターです。
これはGibsonエクスプローラーのコピーモデル Ibanez The Destroyer 2459でファーストアルバムのレコーディングでも使われたようです。
ファーストアルバム録音時にはこのIbanez DestroyerもGibsonエクスプローラーと同じ形だったのですが(ボディの色も元は白一色)レコーディング後PVの撮影時点では視覚的イメージを重視するためかボディーが大胆にカットされお馴染みのカラーに塗装されていました。
切り取り部がサメが大きく口を開けたような攻撃的なルックスからSharkという愛称で呼ばれている1本です。
ミニ四駆の軽量化のように(昔ミニ四駆で遊んだ世代の方は分かるかと思いますが)カットするラインに沿ってまず穴を空け、それをつなぎ合わせる形で切り取られています。穴の跡はギザギザのままになっておりバックルのようなものが2つ取り付けられていますが強度を補うというよりは見た目のインパクトを出すためだと思われます。
ファーストレコーディングまではエディ本人お気に入りの1本でしたがボディをカットした代償は大きかったようでサスティーンがかなり失われてしまったとの事です。ボディカット後もライブでは使用されましたがファースト以降のレコーディングではSharkの出番はほとんど無かったのではないかと推測されています。
ピックアップはDimarzio dp100 super distortionだと言われていますが度々変更されていたようでファーストアルバムレコーディング時のピックアップが何であったかは不明です。
ギター③ Gibson Les Paul Custom White
この時期に使用されたギターとしてさらにもう1本注目したいのがエディーのイメージとしては少し意外な白のレスポールカスタムがあげられます。
※画像はイメージです。
このギターもクラブ廻り時代から所有していたと思われ初来日公演でも使用されています。もしかするとファーストアルバムのレコーディングでも使われたかもしれませんが、ボディカットによって音が変わってしまったIbanez Destroyerの代役の可能性もあります。このギターも高域の減衰を抑えるためでしょうかフランケンストラトと同様にトーンポットが外されているのが特徴です。
ひょっとかするとフランケンストラトのボリュームポットは55年製レスポールJrからではなくレスポールカスタムのポットを移植した可能性もあります。どちらにせよGibsonギターに採用される500KΩポットに変わりはありませんがどうでしょうか?
アンプ Marshall 1959 Super Lead
ファーストアルバムでのブラウンサウンドの最大のポイントはアンプにあるといわれています。クラブ廻り時代にライブハウスで見つけたと言われるMarshall 1959 Super Leadでエディがファーストアルバムのレコーディングで使用していたメインのアンプヘッドは"Baby Marshall"という愛称で呼ばれています。
このアンプは基本はノーマルのままだとかJose Arredond氏によるモディファイが加えられている、電圧を上げているか逆に下げているなど様々な説があるのでこれらを検証してみましょう。
まず電圧に関してですが初来日のステージ上でも変圧器の資料写真がありますので電源電圧を変更していたことは間違いないでしょう。電圧を上げていたのか下げていたのかですが電圧を上げた場合音量は大きくなるかと思われますが入力信号に対する許容範囲も広がります。ギターのドライブサウンドは許容入力を超えることにより作られるので電圧を上げた場合は逆に歪みにくくなってしまいます。そのため現在では電圧を下げていたという説が有力です。
電圧の操作ではありませんがチューブアンプにアッテネーターを接続して出力を下げほうがサチュレーションさせやすくよく歪みます。歪みエフェクターなども電池が減ると歪みやすくなります。昇圧されたエフェクターは音量が上がったり音に張りが出ますが歪みみくくなります。
このため電圧を下げていたという説で間違いないのではないかと思われます。
どの程度電圧を変化させていたかですが米国仕様の電圧120Vを60V~90Vへ下げていた、Baby Marshallは本国イギリス仕様で220Vを140Vへ減圧していたなどの説があります。前述のとおりクラブ廻り時代に米国内で見つけたアンプであることと後年のエディ本人のインタビューで変圧器をボリューム代わりに60V~90Vで使っていたと語っているため120Vからの減圧説が有力ではないかと思われるます。
初期ブラウンサウンドを再現したいという場合手に入りにくいヴィンテージの1959 Super Leadをさらに降圧させるなどの普通でない使い方をするのもなかなか難しいところかと思います。そこでヴァン・ヘイレン公式EVHのシグネチュアーアンプヘッドEVH 5150IIIシリーズであればもう少し手軽に当時のサウンドに近づけそうです。いくつか5150IIIには種類があり出力の違いやコンボタイプなどもありますが使用されているパワー管が6L6のものかEL34管かの違いでもタイプが分かれているようです。
中でも1959SPLと同じEL34管仕様のものが初期ブラウンサウンドに最も近いようなので国内では少々手に入りにくいようですがEL34式のものがあればこちらを選ぶのがよいでしょう。
というのもブラウンサウンドを生み出す重要な要素としてBaby Marshallのパワー管の変更も見逃せないポイントだからです。Baby MarshallにはEL34ではなく米国製Sylvania 6ca7がパワー管として使われていたようです。
EL34と6CA7は同じ規格のようですが生産国や製造メーカーが違えばサウンドも違ってくるはずです。EL34仕様の5150IIIであればバイアス調整が必要ですが6ca7への付け替えも可能と思われるのでヴィンテージの米国製Sylvania 6ca7は難しいでしょうが6ca7現行品⇒であれば入手しやすいので少しでもブラウンサウンドに近づけられるようメーカーごとに付け替えて研究するのも可能でしょう。(6L6管バージョンの5150IIIでは規格が違うため6ca7への付け替えは出来ませんのでご注意ください。)
さてJose Arredond氏によるモディファイ説ですが元々120V仕様のアンプを違う電圧で使う場合、真空管を含めバイアス電圧など各部の電位バランスが崩れてしまうと思われるので60V~90V間で上手く電位のバランスが取れるよう手が加えられた可能性は十分にあるかと思います。
ただし入力電圧の変化に対応するための調整のみでMarshall 1959の基本構造がそのままであればノーマル説も間違いでは無いと言えるのではないでしょうか。またこれらの調整がJose Arredond氏によるものかは分かりません。
セカンドアルバムVAN HALEN IIレコーディングではJose Arredond氏によるもっと大幅なモディファイがMarshall 1959に加えられたという説もあるのでこの辺りが憶測を呼ぶ原因かもしれません。
アンプに関してはBaby Marshallの電圧操作だけでは無くほかにも秘密があるのですが、それは歪みを生み出す接続方法の項目でまとめて解説する事にいたします。
スピーカーキャビネット
ギターキャビネットもブラウンサウンドを生み出すための秘密があるようです。当時のインタビューや様々な研究、解説からキャビネットのサイズとしては大型アンプ用の12インチが4発のものの様ですが2種類のスピーカーを組み合わせた独自のスピーカーキャビネットを使用しているとのことです。
使用されたと推測されているスピーカーですがCelestion Greenback G12M25やG12H30、JBL D-120などの組み合わせとの説がありますがCelestion GreenbackではなくBlackbackのほうが近い音がするというマニアの方もいるようです。
これらのスピーカーの場合仮にG12H30の4発だとしても合計の耐圧は120Wです。チューブアンプの場合はピークパワーが定格出力の倍以上になる場合もあり、これではスピーカーが飛んでしまう恐れもあります。しかし、このようにスピーカーが悲鳴を上げるような限界ギリギリの使い方がブラウンサウンドのような真のドライブサウンドを生み出す秘訣の一つとも言えるでしょう。
使用スピーカーの詳細は完全に解明されていないため初期ブラウンサウンドを追求する場合これらのヴィンテージスピーカーユニットを揃えてキャビネットを自作し研究するのもアリですが、現行のギターキャビネットであればシグネチュアーアンプヘッドEVH 5150 Iconic用に開発された4x12のキャビネットにはEVH Celestion Customスピーカーが使用されているためブラウンサウンドの再現にはこちらがお手軽かもしれません。
イコライザーMXR MX-109 6 Band Equalizer
初来日公演での機材写真を確認すると複数あるMarshallアンプヘッドの内1台だけ入力部付近にMXR MX-109 6 Band Equalizerが貼り付けられているのが確認できます。さらにもう一台同じMXR 6band EQがエディのペダルボード側にも置かれているのが確認されています。
このMXRのイコライザーは定番の製品で現在もアップデートが施されたものが販売されていますが当時のものはON/OFFスイッチがなく電池のみでの駆動だったようです。
MXR M109S 6-Band Graphic EQ現行品
インプット直前にイコライジングがなされている点は注目すべきポイントですが、どうやらステージ上での長いシールドケーブルによる音質変化を補正するために使われたようです。
フランジャーMXR M117 Flanger
こちらもイコライザーと同じくMXR製でAin't Talkin' 'Bout Loveでのエフェクトをはじめエディの使用でおなじみのフランジャーです。
※エディのセッティングManual 30~40%、Width30~40%、Speed40%、Regen100%(※設定値は推測です。)
設定値は初来日公演、二度目の来日公演ともにコントロールノブがテープで隠されているため不明なのですがこれまで様々な推測からManual 30~40%、Width30~40%、Speed40%、Regen100%ほどではないかと言うことですが改良が加えられているとのことです。
同じMXRからEVHシグネチュアーモデルも出ていますのでエディのフランジャーエフェクトを再現したいという場合は復刻版MXR M117R Flangerに手を加えるよりもこちら↓がおすすめです。
MXR EVH117 FLANGER Eddie Van Halen フランジャー
MXR Phase 90
MXR製の定番フェイズシフターMXR M101 Phase90もエディが使っていることで有名です。フェイザーを加えつつブースト効果もあるため主にリードプレイで使用されることが多かったようです。
コントロールはエフェクトの強さを調節するツマミが一つだけですがエディは10%~30%程度の薄めの設定で使用していたようです。
定番エフェクターなので現在も入手可能ですがエディが当時使用していたものは製品表記がスクリプトロゴの初期型モデルで現行機種とは微妙な違いがあるようです(⇒復刻版)。
このPhase90もEVHシグネチュアーモデルが販売されておりスクリプトロゴ期を再現するモードもついているようなのでVAN HALENファンのみならずともphase90のヴィンテージサウンドがほしいという方にはこちらもおすすめです。
Maestro Echoplex EP-3
ジミー・ペイジやブライアン・メイも愛用したEchoplex EP-3をエディも初期に使用していました。
※ECHOPLEX EP-3 (写真はイメージです)
EP-3のプリアンプ部を通した音というのはギタリストたちの間で定評がありエディもプリアンプ効果を狙って導入していた説もありますが接続経路とEP-3のON/OFF用フットスイッチをペダルボード上に配置していた点を考えると特にライブではディレイとしてエコー機能も使っていたのではないかと推測します。EP-3の再現モデルやヴィンテージ品を検索⇒
BOSS GE-10
EP-3にBOSSのグラフィックイコライザーGE-10がつながれているのもエコーサウンドの音色補正のためではないかと思われます。
EP-3はアナログのテープエコーであるため良くも悪くもエフェクト音は原音と違いが出ます。ディレイ音もエディの求めるサウンドになるよう調節していたのかもしれません。
先ほどの説明のようにPhaserとフランジャーが置かれているペダルボード側にもMXR 6Band EQが設置されているため機材ごとに音質を補正できるよう綿密なセッティングにこだわっていた点がうかがえます。
Univox EC-80
当時のライブでは2機のEchoplex EP-3とは別にUnivox EC-80というテープエコーが爆弾を模した構造物に収められて設置されていました。
これはタッピングプレイで有名な曲Eruptionのラストでテープ速度を落として特殊効果を得るために使用される機材です。
わずかな場面での使用のためブラウンサウンドの根本に直接関わる機材ではなさそうですがライブではエディ本人が実際にツマミを操作しながらエフェクトを効かせるというパフォーマンスを強調するためステージセットとして爆弾型の巨大模型に入れたのでしょう。こういった点にも聴衆を楽しませる遊び心と工夫がうかがえます。
初期ヴァン・ヘイレン機材接続順
当然ながら機材の接続順にもブラウンサウンドを生み出す秘密があると思われます。ここまで紹介した機材の接続経路を研究してみたいと思います。
まずは重要な歪みを生み出す経路のみを抜き出して考えてみましょう。
エディの歪みを生み出す接続方法
先ほどの解説のように60V~90Vほどの歪みやすい電圧に降圧されたMarshall 1959の使用は有名ですが本人のインタビューなどからどうやらMarshall 1959アンプヘッドを2台使用したとのことです。
ファーストアルバムレコーディング当時はまだファズのような荒くブーミーな歪みペダルしかなく、きめ細かく強く歪むディストーションペダルがなかった時代どうやってあのブラウンサウンドを生み出したのでしょうか。ましてやディストーションペダルが豊富にある現代でも単純にディストーションをONにしただけではブラウンサウンドには成らないでしょう。
そこで、あのような歪みを得るために単体では強く歪まないオールドマーシャルヘッド2台を直結させることでブラウンサウンドを生み出していたというのが核心部分のようです。
おそらく降圧させて歪みやすくなったMarshall 1959を1台目としてフルアップさせ現代のようなディストーションペダル的に使います。そしてパワー管のサチュレーションを含む良質なオーバードライブを得るためでしょうかプリアンプからのSENDではなく大電力のスピーカーアウトから出力を取り出すようですが、これをそのまま次の2台目アンプヘッドの入力に繋ぐわけにはいきません。
そこで登場するのがダミーロード/ロードボックスです。ダミーロードを使うことで大電力のスピーカー出力をラインアウト出力へ変換します。ここから2台目のアンプヘッドの入力へ接続します。
*どのようなアンプであっても上記のような接続方法を試す場合は必ずダミーロードを使用してください。(前段ヘッドのエフェクトループから出力する場合でもスピーカーアウトには必ずキャビネットかダミーロード、ロードボックス等の負荷を接続してください。)また、この様な予防措置をとってもアンプヘッド直結には無理な負担がかかります。機材の損傷等が発生しても当サイトでは責任は負いかねますので必ず安全性を確保したうえで自己責任において実施してください。
このような接続方法は後年のエディの機材経路などから様々な研究をもとに推測されている接続方法です。90年代頃のエディの機材経路を解説した資料を見るとアンプヘッド➡Palmer PDI-03というスピーカーシミュレーター/ロードボックスからH&Hパワーアンプへと繋ぐ方法が採用されています。
初期にはどのようなダミーロードが使用されていたのかは不明ですが後年のエディの機材の再現にも初期ブラウンサウンドの再現においてもダミーロード/ロードボックスを使う場合はこれが一番おすすめです。
そのほか人気のロードボックスとしては次のようなものもあります。
初期ブラウンサウンドの再現にあたって、5150IIIの他に現在入手しやすいアンプ候補としてMarshall Studio Vintage SV20hをご紹介します。Marshall1959SPLと基本構造が同じですがパワー部が20W出力に小型化してあるため歪ませやすく音量も過剰にならないでしょう。出力は小さいですが前段のAMP Head①の代わりとしては最適かもしれません。
パワー管も1959SPLと同じEL34なので6ca7への交換もできます。
つづいて、この時期の各アンプヘッドのセッティングを推測してみましょう。これまでの研究などからはイコライザー類はすべてフルにする説もありますがブラウンサウンドを追求されている方が機材を揃えてテストしたところMiddleを上げすぎると高音の抜けが悪くなるとのことです。
さらにPRESENCEツマミを装備しているアンプの場合、PRESENCEは倍音を調節するツマミであるため全開にする事でアンプ本来の性能を引き出せるようです。ただ通常PRESENCEを上げすぎると高音がキツなりすぎ耳障りな音になる恐れがあります。その分TREBLEを一旦最小近くまで下げる必要があるでしょう。エディが不要な高音域をカットしていた事はMXR 6Band EQやBOSS GE-10のセッティングからもわかります。
これらを総合するとまずギター直後のAMP Head①のセッティングは次のようになるのではと推測しました。
※設定値は推測です。
PRESENCEとBASSは全開、MIDDLEを50~60%前後でTREBLEを最小値付近で探るのがブラウンサウンドに近づくポイントだと推測します。当時の写真からアンプヘッドは全てINPUT1にプラグが差し込まれているためVOLUME1をフルアップにして歪ませていたと思われます。
さて、この時代パワーアンプとしての2台目のMarshallヘッドも降圧されていたのか、音量重視でそのままの電圧であったのかはわかりません。初来日公演では変圧器が2台用意されているのが確認できるのでメインのアンプヘッドはどちらも降圧されていた可能性はあります。パワーアンプ用AMP Head②のセッティングですが実際にマーシャル2台直結を実験した方々によりますと普通につないだだけではノイズが酷く音ヤセしてしまうとの事で2台目のイコライザー類はBASSのみ全開にして他はすべてカットするという極端なセッティングが必要なようです。
※設定値は推測です。
いずれにせよ2台目のアンプヘッドもVolumeをフルにして歪みを得ていたかと思いますが、上記までの解説のようにスピーカーの耐圧オーバー、アンプヘッド2台によるパワー管のサチュレーション2機分という限界ギリギリのかなり無茶な使い方をすることでようやくあのブラウンサウンドが生み出せるということで一般の人々が簡単に再現できるシロモノではないことが判ります。
ペダルボード類
つづいてペダル、エフェクター類の接続経路を見てみたいと思います。初来日公演をはじめ当時のライブ取材などでペダルボード類が写真に収められておりエディのサウンドシステムを解明するうえで大変重要な資料となっています。これらを元にモジュレーション、空間系エフェクトの接続経路を推測してみましょう。
エディ本人が足元でON/OFF操作するメインのペダルボードにはおなじみのMXR 117フランジャーとMXR Phase90のほかにMXR 6 Band EQがアンプヘッドに設置されているものとは別にもう1台用意されています。アンプヘッド側に比べると800Hzを頂点とした急激な山なり型のイコライジングとなっています。
※設定値は推測です。
6Band EQ設定
- 100Hz ±0dB
- 200Hz +4.5dB
- 400Hz +9dB
- 800Hz ~+15dB~
- 1.6KHz ~+10dB~
- 3.2KHz ±0dB
フェイザー設定
- SPEED 10~30%
フランジャー設定
- Manual 30~40%
- Width 30~40%
- Speed 40%
- Regen 100%
さらにスイッチャーかスプリッターに改造されたと思われる「1」のマーキングがなされたトーンベンダーのケースに加え、スイッチ付きで上面に入出力ジャックが装備されたマーキング「2」の謎のケースがボード上に設置されています。
シールドの経路を辿って推測してみると117フランジャーにまず信号が入力され次にPhase90へとつながっています。(当時の117Flangerは現行品と違いINPUT、OUTPUT共にケースの右サイドに配置されていたようです。なぜか撮影された段階ではPhase90の入力ジャックにはプラグが半分外されたような状態でした。撮影時はセッティングか撤収の途中だったのかもしれませんが本番中はしっかりプラグが差し込まれていたはずです。)Phase90から一旦ボード外へシールドが伸びていますが戻ってきた信号をケース「1」で分岐させるか切り替えるのだと思われますがどうでしょうか。別のライブ時にボードを捉えた写真ではケース「1」の右側側面と上面にもシールドケーブルが接続されているのが確認できます。
ケース「1」にはMXR 6Band EQのアウトプットからのシールドケーブルが接続されていますが別のライブ時の写真などを見ても6Band EQの入力部分には何も接続されていません。ライブによってはMXR 6Band EQではなくBOSS GE-10に置き換わっていますがやはり入力部分にはなにも繋がれていません。またケース「1」からケース「2」へシールドケーブルが渡されていますが写真撮影時にはケース「2」のジャックにはプラグは接続されていません。この部分も別のライブ写真を見ても本番中も同じ状態です。
謎の部分ではありますが当時のライブでも曲によってフランケン以外のギター、シャークやレスポールカスタムに持ち替えていたためギターごとに別系統の信号経路を受けられるよう空けていた可能性もありそうです。もしくは、歪み用AMP Head①をスルーしてクリーンサウンドに切り替えるライン用かもしれません。写真の状態では結線されていないジャックが多いため、この辺りは更に研究の余地がありそうです。
ボード上には他にEP-3のON/OFFスイッチが置かれています。(正確には117フランジャーとEP-3用スイッチのうち1台はボード外の床に直置きとなっています。)
EP-3とBOSS GE-10
ケースが大きいEP-3とBOSS GE-10はメインのペダルボードとは別に置かれていました。EP-3は2台用意されており1台は予備の説もありますがブライアン・メイのようにドライ音とディレイ音を分けてリピートごとに別のアンプで鳴らしていた可能性が高いのではないかと思われます。
EP-3それぞれ1台づつにBOSS GE-10が接続されていてイコライザーの設定値もイラストで再現してみました。左側のEP-3のケース内には何故かMXRのエフェクターが置かれていますが何も接続されていないようです。Phase90の予備の可能性が高いと思われます。
右側EP-3の上面パネルが被せられている側に接続されたGE-10のフェーダー部分は黒いガムテープで覆われていて設定値は不明です。
EP-3左側設定
- ECHO DELAY 12
- SUSTAIN 1
- VOLUME 2
BOSS GE-10左側設定
- 31Hz -2dB
- 62Hz -2dB
- 125Hz +1dB
- 250Hz +3dB
- 500Hz +4dB
- 1KHz +4dB
- 2KHz +1dB
- 4KHz -1dB
- 8KHz -3dB
- 16kHz -3dB
- LEVEL +3dB
EP-3右側設定
- ECHO DELAY 12
- SUSTAIN 0
- VOLUME 2
BOSS GE-10右側設定
不明
※設定値は推測です。
機材の入出力の位置から接続経路を辿ってみると左右両側とも同じ経路のように見受けられます。まず①(黒)のシールドケーブルによりEP-3のINPUTに信号が入力されエコーのエフェクトがかけられたのち②(グレー)のシールドからGE-10につないでエコー音の補正を施して③(青)のシールドからアンプ側へという接続経路のようです。オレンジ色で示したシールドケーブルはペダルボード側のフットスイッチに繋がっています。
細かな設定値も確認しておきましょう。EP-3のディレイタイムはどちらも12の目盛りの位置に設定されています。0~9段階のSASTAINとVOLUMEノブがありますが左側のEP-3はSASTAINが1、VOLUMEが2ほどに設定されています。右側のEP-3ではSASTAINは0でVOLUMEが2辺りになっており隠し味的かつ効果的にディレイを使っていたと思われます。
BOSS GE-10はその名の通り31Hz~16KHz間の10バンドごとにマスターLEVELを含む各帯域+12dBから-12dBの増減が可能でフラットの0dBから一目盛りごとに±2dBの変化となっています。イラストのフェーダー位置は写真をもとに再現したものなので細かな違いがあるかもしれませんがエディのおおよその設定値は500Hzを中心に+4dBに持ち上げ、高音域側を-3dB低音側は-2dBほどに削った山なり形のイコライジングとなっています。
さらに次のイラストは同日もしくは同じ会場の別の公演日に捉えられたと思われるもう1枚の写真を元に再現したものです。こちらは2台のEP-3に対しGE-10は1台しか置かれていませんでした。GE-10のフェーダー設定が前述のものとは違っています。このGE-10単体バージョンはシールドが機器の下を通っていたり経路がわかりずらいので接続順の断定はせず配線の取り回しのみ再現してみました。
※設定値は推測です。
このGE-10がガムテープで覆われていた側セッティングの正体なのか単にもう1台の設定が変わっただけなのかは不明です。こちらは高域が少し上がっていますが前述の左側GE-10の設定に比べると平坦なイコライジングとなっています。EP-3のセッティングに関しては前述のものと同じようです。もう1台のGE-10は写真の枠外にあるのか、ライブ本番でもGE-10一台のみであったのかは判りません。
EP-3左側設定
- ECHO DELAY 12
- SUSTAIN 1
- VOLUME 2
BOSS GE-10設定
- 31Hz -2dB
- 62Hz -2dB
- 125Hz -2dB
- 250Hz -2dB
- 500Hz -1dB
- 1KHz ±0dB
- 2KHz +1dB
- 4KHz +1dB
- 8KHz ±0dB
- 16kHz -2dB
- LEVEL +1dB
EP-3右側設定
- ECHO DELAY 12
- SUSTAIN 0
- VOLUME 2
※設定値は推測です。
接続経路推測①フランジャー、フェイザーの接続位置
歪みの経路とペダルボードの構成から全体的な接続経路を考察していきたいと思います。
最初にギターからフランジャー➡フェイザー➡エコープレックスというのがエディー本人がインタビューで言っていた順序のようですが、これはかなり単純化して発言したのではないかと思われます。
前述のようにマーシャルアンプ2台を接続することとMXR 6Band EQを長いシールドケーブルによる音質変化の補正として使用していたのでギター➡MXR 6Band EQ➡AMP Head①➡ダミーロード➡フランジャー等のエフェクター類➡AMP Head②というのが大まかなルートではないかと思われます。事実、初来日公演時の機材写真ではMXR 6Band EQはアンプの入力部付近にテープで張り付けられています。資料の写真では小さくて正確な数値は不明ですが各フェーダーのイコライジングもおおよその雰囲気を再現してみました。
※設定値は推測です。
バッファとしての使用のためかペダルボード側のEQと比べると中心となる音域を少しブーストしただけのほとんどフラットな設定です。最高音域の3.2KHzのみ少し減衰させてカットしている点は注目ポイントです。レコーディングではステージ上ほど長いシールドケーブルは必要ないはずなので、このアンプヘッドに張り付けられているバッファ用6Band EQはライブ時のみの可能性もあります。
またフランジャーの接続位置というのが肝のようでエディーのフランジャーエフェクトの再現に苦心されている方も多いようです。エディ本人はギターとアンプの間と発言しているようですが単純にギター、アンプ間にフランジャーを接続しても原曲のようなフランジャーサウンドにはならないようです。ここまで見てきたエディのブラウンサウンドのシステムと組み合わせてフランジャーの位置を考えてみましょう。
まず、当サイトのエフェクター基礎講座のエフェクター接続順コーナーでも解説していますが揺れもの系の中でもフランジャー、フェイザーはセオリー通り歪み➡フランジャーの順でも、その逆で歪みを後ろに持ってきても問題のない例外的な2機種でもあります。
そこで、セオリー通りの接続とその逆との組み合わせで2つの歪みの間にフランジャーやフェイザーを挟むことであのエフェクトを生み出しているのではないかと考えてみました。エディの場合は降圧した1台目のアンプヘッドが歪みペダルと同じ役割になり、ギター➡歪み➡フランジャー➡パワーアンプ部の歪みの順になることで原曲のエフェクトが生み出されているのではないかと考えます。
実際に手元の機材を使って歪みペダルとプリアンプの歪みの間にフランジャーをセットして試したところ、この方法がエディのフランジャーエフェクトに最も近いと感じました。この接続順の場合フランジャー、フェイザーの効きがキツくなり過ぎる傾向にあるためフランジャー、フェイザーの設定は低めにして薄くかける必要があります。先ほど解説しましたが実際のエディのセッティングも低めに設定されています。
今までエディのフランジャーサウンドが上手く再現できなかったという場合は一度上記の方法を試してみてください。
接続経路推測②EP-3の接続方法
ペダルボード類の項目でも触れましたがエコーエフェクトをメインのラインとは別のアンプで鳴らしていた可能性を考えてみたいと思います。
初来日公演では合計9台ものアンプヘッドが持ち込まれていましたし、後年のエディのエフェクトの切り替え方法としてセンターのメインとさらにL/R両サイドそれぞれ別のラインを利用していた事を考えると初期の段階で既にメインの歪みとエフェクトを掛けるラインを分けていた可能性があるのではないでしょうか。
この時代既にブライアン・メイがディレイをかけるときは原音とディレイ音は別々のアンプで鳴らす方法を採用していました。
ブライアン・メイのディレイ構成
(ブライアン・メイ使用機材のページで詳しく解説しています。)
この方法を取ることでエフェクトを更にハッキリと効果的にかけることができます。エディも先人たちの機材の使い方を研究していたはずです。
セッティング全体図
以上の推測から全体的な接続経路を構築してみると、まずギター➡MXR 6Band EQ➡降圧したAMP Head①➡ダミーロード➡フランジャー、フェイザー➡歪み用のAMP Head②に行くメインのライン。それとは別に➡エコープレックス➡AMP Head③とエコープレックスが2台あるので更にもう一台のAMP Head④などそれぞれ個別のパワーアンプを用意していたのかもしれません。
※設定値は推測です。
ディレイのON/OFFで音が出るアンプの数が変わると全体の音量も変わってしまうためメインのアンプに加えディレイOFF時でもL/R両側から原音は常に出力されるようになっていた、というが後年のエディのシステムから推測される可能性の一つです。
という事はペダルボード上の操作は各エフェクトのON/OFFのみでのラインの切り替えは必要なさそうなのですがどうでしょうか?ペダルボード上のケース「1」「2」にはスイッチも付いていますのでUnibox EC-80を使う場合やギターの持ち替えではラインの切り替えを行っていたのではと考えてみました。
2機のEP-3への分配ポイントはダミーロードの可能性もありますが、この場合フランジャーの手前でEP-3と信号経路が分かれてしまうためエディー本人の証言フランジャー➡フェイザー➡EP-3という接続順と一致しません。
そこで考えられるのは初来日公演時に撮影されたアンプヘッド群の写真を見るとMarshall1959はチャンネルリンクができるので同一チャンネルにおいて2つあるジャックが入力にも出力(原音スルー、分配)にもなる点を応用して別々のMarshallアンプヘッド同士がINPUT部分でつながれています。そのためAMP Head②のジャック部分から分配させた信号をEP-3へ送っている可能性が高そうです。
この場合EP-3が2台あるのでAMP Head③のジャックで更に分配して2台目のEP-3を経てAMP Head④へという信号の流れとなります。BOSS GE-10はエコーリピート音の補正というよりも分配によって信号レベルが下がるのを補う役割なのかもしれません。
写真ではアンプヘッド同士の配線が分かりにくいのでこの辺りも更なる研究の余地がありそうです。
いずれにせよペダルボードの後の分配であればエディ本人の証言フランジャー➡フェイザー➡EP-3という順との整合性がとれます。(イラスト上のAMP Head③、AMPHead④に対して。フランジャー、フェイザーはONにするとAMP Head②~④全てのアンプから出力される構成となります。)
そしてこの接続例から推測できる最重要ポイントとして2機のEP-3用AMP Head③とAMP Head④はクリーンサウンドに設定されなければなりません。(エコーの後に歪ませるとサウンドが濁ってしまうため)
個体差はあるかと思いますがMarshall1959はVolume30%ほどで最大音量に達してしまい30%以降は歪みだけが強くなるという特性のようです。LとRで2機あるためメインのAMP Head②とのバランスを考えるとクリーンサウンドであればAMP Head③④のVolumeは20%~30%以下が最適となりそうです。
いずれにせよ歪みが最大となる
AMP Head①➡(直列)AMP Head②メインのディストーションライン
と
AMP Head①➡(分配)EP-3➡クリーンのAMP Head③④のクランチライン(前段AMP Head①の歪みのみ印加)
それぞれのサウンドが聴覚上ミックスされることが歪んでいながらクリアだと言われるブラウンサウンド最大の秘密なのかもしれません。
レコーディングでは一部エフェクトは省略されたか必要に応じて個別に接続された事も考えられます。空間系エフェクトなどはスタジオ機材であと掛けした可能性もあります。
しかし、エディのフランジャーサウンドなどはレコーディング機材で後掛けするよりも上記のような経路でダイレクトに直録りしないと効果が出ない気もしますがどうでしょうか。また初期作品のメインテイクはほぼ一発録りと思われるのでレコーディングとライブ時の機材の違いはさほど無いのでは?との推測もできます。
以上、初期ヴァンヘイレンの使用機材とブラウンサウンドの秘密を検証してみましたが、当サイト独自のほぼ憶測の域を出ない箇所も多々あろうかと思います。世界中に沢山いらっしゃるエディのサウンドを追及している方々にはそこは違うだろと思われる部分もあるかとも思いますがブラウンサウンドに限らずギターサウンドを追求するうえで何か一つでも解明のヒントになればと思います。
そしてブラウンサウンドの秘密は完全に解明されてはいませんので、これからも更なる研究が続いていくことでしょう。
セカンドアルバム以降の使用機材とサウンドの検証はまた次の機会に特集してみたいと思います。
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