Paul Gilbert使用機材

今回はテクニカル系ギタリストとして日本でも人気のポール・ギルバートの使用機材を特集したいと思います。
ポールのプレイの特徴としては、幼少の頃より親しんだクラシックの影響を受けた速弾きフレーズに加え、Mr.Bigではヴァン・ヘイレンのようなアメリカンサウンドスタイルに合うようブルースの要素も加わっていきました。
ソロ活動を通じて近年ではテクニカルな速弾きなど以外にもニュアンスを重視したエモーショナルなプレイを聴かせるなど常に進化を続けている点も感銘を受けます。
サウンド的にはHR/HM基本のディストーションスタイルでありながら、どこか透明感があり爽やかな音楽にも馴染む音像が印象的です。
音楽的な側面以外でもポールの明るくユーモアたっぷりな性格が様々なメディアを通じて伝わってきます。
このあたりも人気の要因でしょう。個性的なセンスがギターや機材にも色濃く反映されています。
そんなユニークなポールの使用機材を見ていきましょう。
Racer X時代
ポールは高校卒業後、LAの音楽学校ギター専攻科に入り腕を磨き卒業後は講師として教える側に回ったようです。そんな中、自身の音楽活動の意欲により同校に在籍のメンバーを中心にRacer Xを結成します。このRacer Xでの活動がギタリストとして本格的に知名度を上げていくきっかけとなりました。
ギター
Epiphone Wilshire

このころ使用していたギターがEpiphone Wilshireという、ちょっと変わった形のギターです。ギター科の生徒になる以前から使用していたようですが、こちらはチューニングが狂いやすかったそうでレコーディング等には使われなかったそうです。レーサーX時代からの本格的な音楽活動ではLAに来てから入手したEpiphone Wilshireをメインに使っていました。ボディーとヘッドがピンクに塗装され形と相まってユニークな個性が、この頃から既に発揮されていたようですね。
このギターの特徴としてはKahler(ケーラー)のトレモロユニットが後付けされておりアームを使ったプレイが可能になっています。また、ピックアップはフロントはエピフォン純正のミニハムバッカーですがリアPUはDimarzio DP100 Super Distortionとのことです。
このWilshireタイプのボディをベースにIbanezで特注して作成してもらったギターもRacer X時代には使われたようです。ここからポール・ギルバートとIbanezの関係が始まったといえるでしょう。
Ice-Stroyer

Racer X時代も1987年になると、さらにもう1本Ibanezに特注してもらったギターを使用するようになります。それがKISSのポール・スタンレー使用で有名なIcemanとエクスプローラータイプのDestroyerのボディを前後で組み合わせたIce-Stroyerと言われるモデルです。こちらもピンク色に塗装されポールの個性が反映されていると言えますがEpiphone WilshireとIce-Stroyerどちらもハイポジションにアクセスしやすい形状でありプレイヤビリティも十分考慮している事が窺えます。
アンプ
レーサーX時代のアンプですが初期には主にアンプビルダー・エンジニアのLee JacksonによってモディファイされたMarshall 1959 Super Lead などをメインに使っていたようです。

その後のMr.Big時代もアンプのメーカー名が変わったとしても基本的な中身はLee Jacksonがデザインしたアンプを使っていくことになります。既にこの時代にポールのサウンドの基礎が出来上がっていたといえるでしょう。
Racer X時代後半からMr.Big初期にかけては、このLee Jacksonデザインのアンプをパワー部として使いプリアンプ部にADA MP-1を使ったセットアップも登場し始めます。
ADA MP-1
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ADA MP-1は12AX7を使った真空管プリアンプで歪み量やEQの設定を120以上のプリセットとして保存できMIDIコンロトールにより切り替えるという当時としては画期的な機材です。コーラスエフェクトも付属しており真空管による歪みとともに、このADA MP-1でしか出せないサウンドがあり80年代HR/HMサウンドを求める層には現在でも大変人気のようです。
これらの機材を組み合わせたシステムを次のMr.BIG時代からの項目で詳しく見ていきましょう。
初期MR.BIGでの使用機材
ギター
MR.BIGに加入後のギターですがIbanezとの契約などによりEpiphone Wilshireの出番は減っていったようですが同社のモデルIce-Stroyerは継続して使用されます。
Ibanez PGM100

さらにミスター・ビッグ時代からはIce-Stroyerに加えてポール・ギルバートの代名詞ともいえるfホールマークが印象的なPGM100も登場します。fホールはペイントなので実際に穴が開いているのではなくソリッドボディで、ネックのジョイントは4点式のボルトオンネックとなっているようです。
ピックアップは
- フロント&リア DiMarzio PAF Pro(DP151)
- センター DiMarzio FS-1
となっておりピックアップカバー、Fホールがピンク色にペイントされています。ブルーのボディーが印象的ですがレーサーX時代からのピンク色も受け継がれています。
Toneコントロールは高音域減衰防止のため装備されておらずワンボリューム仕様となっていますが5wayスイッチによって通常のストラトのように各ピックアップの単独とミックス5通りが選択できるようになっています。Ibanez純正のロック式トレモロユニットが装備されています。
ラックシステム
当時のポールはペダルエフェクトをあまり使用しておらずRACER X時代から使用していたと思われるADA MP-1を筆頭にラックタイプエフェクトを多数使用していました。
Mr.Big初期までのラックシステムの内訳を手元の資料から判別できるものだけ記述してみると、
- FURMAN パワーコンディショナー (電源用フィルター)
- Metaltronixプリアンプ? (ポール・ギルバート特注品?)
- Rocktron Hush II C (ノイズリダクション)
- ADA MP-1 (プリアンプ)
- YAMAHA SPX-90 もしくは Eventide H3000(モジュレーション・空間系マルチエフェクト)
- ADA MQ-1 (イコライザー)
- Ampeg SVT-II (ベース用パワーアンプ)
- Metaltronix M-1000(パワーアンプ) 2台
特に注目すべき機材を中心にシステムを考察してみましょう。
Metaltronix M-1000

メインアンプはMarshall 1959のLee JacksonモディファイからLee Jackson自身が立ち上げたブランドMetaltronix M-1000に変わっています。モディファイマーシャル系統のアンプなのでベーシックなサウンドは受け継がれているかと思われます。2台ありますが後年の1995年ライブでの機材経路を参考にすると1台はDryの歪み専用、もう1台はモニター用かバックアップ用の可能性があります。
Ampeg SVT-II

ベース用アンプヘッドAmpeg SVT-IIの使用も注目ポイントです。ディレイなどWET専用パワーアンプかと考えられますがフルレンジでの重厚感を出すためにギターアンプではなくベースアンプを導入するようになったと思われます。ポールはこのベースアンプが特に気に入っているようで「SVT」という曲を後のソロ活動で作っています。
ラックには、このほかにも空間系モジュレーション用のYAMAHA SPX-90 なども見られますがライブによってはEventide H3000に置き換わることもあったようです。
接続ルート検証
ギター→プリアンプ→空間系モジュレーション→パワーアンプという流れがセオリーになるので、これらのラックシステムの主要経路を検証まとめてみると次の図のようなルートになっているのではないかと想像してみました。

*イラストは当サイトの推測です。参考程度にお考えください。
手元の資料を見てみるとADA MP-1が2台あるように見えましたが、よくみるとINPUTジャックがフロントパネルにないようです。これはMP-1ではなくADA MQ-1イコライザーのようです。MP-1とセットで使われることが多いようでこちらもMIDIコントロールにより保存した多数の設定を呼び出せるようです。MP-1→MQ-1の順の可能性もありますがラックでは空間系モジュレーションエフェクトの後に置かれていることから、エフェクトによる微妙な音質を補正していたのかもしれません。
DRYチャンネル側は歪み専用でラックの上段にアンプヘッドとは別のMetaltronix製の機材がありましたが、これはポール・ギルバート特注のプリアンプではないかと推測してみました。M-1000は市販品なのでプリアンプ部を特注してもらいRETURN直にしてモディファイアンプのように微妙なサウンドの質感を得ていたのではないかと考えてみました。Lee Jackson自身がデザインしたM-1000用の特注プリアンプなら狙ったサウンドを出せたのではと想像してみました。Metaltronix特注プリアンプ→M-1000が自然な経路に感じます。
しかし、Metaltronix M-1000が2台でAMPEG SVT-IIが1台だとMetaltronixの2台がLR2チャンネルのWET用でAMPEG SVT-IIがDRY用かもしれません。
また判別不明のモノの中にはワイヤレスシステムやチューナーなどが含まれているのではないかと想像できます。以上の不明箇所は検証の余地がありそうです。何かわかりましたら追記したいと思います。
プリアンプADA MP-1とLee Jacksonによるアンプ+ベースアンプに空間系エフェクトを組み合わせるというのが「ディストーションスタイルでありながら、どこか透明感があり爽やかな音楽にも馴染む音像」というRacer XからMr.Big時代のサウンドの秘訣なのかもしれません。
1991年~使用機材
1991年Mr.BigのセカンドアルバムLean Into Itツアー時期になると継続して使われる機材もあれば、新たなものに置き換わるなど変化もみられます。
ギター Ibanez PGM300
ファーストアルバム期からのPGM100も継続されて使用されますが、この時期にIbanezから次のシグネチャーモデルPGM300が登場し、こちらも頻繁に使われるようになります。

PGM100との大きな違いはリバースヘッドのメイプル指板になっていることでしょう。またピックアップがボディーへのダイレクトマウントになっているようです。
ピックアップの種類に関してはPGM100と同じ構成
- フロント&リア DiMarzio PAF Pro(DP151)
- センター DiMarzio FS-1
のようです。ワンボリューム式である点も同じですがPGM300はスイッチング奏法ができるように、どこかのポジションをセレクトした際に音量が0になるようにカスタムされているとの事です。
参考画像の市販モデルにはIbanez純正のロック式トレモロユニットが搭載されていますが、本人使用のプロトタイプはトレモロユニットが取り外されているようです。当初は搭載されていた可能性もありますが、どの時点で外されたのかは不明です。
PGM300の登場で出番は少なかったようですが水色ボディーのPGM200も存在します。PGM100とPGM300をメインに曲によって使い分けられるようにギターの種類も徐々に増えていったようです
ラック内の変化
まずアンプヘッドは全てポールお気に入りのAmpeg SVT-IIに変わりMetaltronix M-1000は姿を消しました。
もしかすると写真に写っていないだけで別のラック内などにMetaltronixが置いてあり使用していた可能性もあるのですが、Ampeg SVT-IIが計3台に増えていますのでパワーアンプの数としては、これで十分にも思われます。
これに伴ってか特注と思われるMetaltronixプリアンプもラック内から姿を消しています。
また、ADA MP-1とADA MQ-1各1台ずつだったのがイコライザーMQ-1は姿を消しMP-1が2台に変わっています。MP-1からAMPEG STV-IIへダイレクトで接続されるDRYライン用とWET用にもう1台MP-1が用意されていると考えるのが自然な気がします。MP-1の出力はステレオコーラス用に2つあり、おそらくコーラスOFFでも両側から同じ信号が出力されるものと思われるのでWET用には1台で十分でしょう。
空間、モジュレーション用エフェクトもYAMAHA SPX90やEventide H3000ではなくAlesis Midiverb IIに変わっています。
こちらも2台用意されているので各チャンネルに1台ずつ用意されているいたのではないかと考えられますが、Alesis Midiverb IIはステレオ使用なので1台でも十分ですが2台使用してエフェクトを左右微妙な違いに設定しておきデチューン効果を得ていた可能性があるのではないかと考えました。

*イラストは当サイトの推測です。参考程度にお考えください。
ワイヤレスシステムのアンテナらしきものがラックの天井に設置されていますが、このほかに初期と同じ機材はノイズリダクションRocktron Hush II CとFURMAN パワーコンディショナーくらいで残りのスペースは引き出しになっているように見えました。
初期に比べると随分シンプルな構成になっています。大規模で複雑なラックシステムは搬入、セッティングが大変でトラブルが起きると特定にも時間がかるので最初のツアーからアップデートしたのだと思われます。
ドリル
アルバムLean Into Itでは1曲目Daddy, Brother, Lover, Little Boy(The Electric Drill Song)で正に電動ドリルを使ったパフォーマンスが見られます。レコーディング当時から使っていたのはマキタ6012HDというモデルだったようです。

こちらは現行品のDF330DWXです。現在使っているドリルに似ていますが、FD02というモデルとの情報もあります。
6012HDは既に廃盤であり長年の使用のためか近年のライブではマキタの現行品に置き換わっているようです。このようなユニークなパフォーマンスもポールのユーモアのセンスですね。
通常楽器という分類には入らないでしょうが、ポールの使用機材としては見逃せないためご紹介しました。
*ドリル奏法を真似る際はくれぐれも自己責任において行ってください。
少しずつ機材が変化していくのもポールの特徴のようです。これ以降の機材も近いうちに追記していく予定ですのでお待ちください。おたのしみに!

