Jimi Hendrix 使用機材

アーティスト別ペダルボード研究第1回はやはりエレクトリックギタリストの伝説、ジミ・ヘンドリックスの使用機材を取り上げたいと思います。
今現在では当たり前のようにイメージできるエレクトリック・ギターの派手に歪んだサウンドですが、その大元の基礎を作ったのがジミ・ヘンドリックスと言えるのではないでしょうか。
それ以前のエレクトリック・ギターサウンドはサーフロックやベンチャーズのような、いわゆるテケテケサウンドだったのですが、派手に歪みフィードバックで唸りまくるギターサウンドというのはジミヘンの登場まではあり得ないものでした。
テケテケサウンドが悪いというわけではありません。それでも当時一般的だったサウンドから一線を画す炸裂するようなギターサウンドとパフォーマンスを見せたことは正に芸術は爆発だという言葉がピッタリで、同時代の人々にとっては革命的な出来事だったのではないでしょうか。
その伝説的なサウンドをどのような機材を使って生み出していったのか見ていきたいと思います。
最初のエレクトリック・ギター~バックバンド時代
ストラトキャスターのイメージが強いジミヘンですが、最初に手にしたエレクトリック・ギターは父親に買ってもらった白いSuproのOzarkだったようです。
Supro Ozark
シングルコイル1つのシンプルなギターです。独特のブリッジ構造により伸びやかなサスティーンが得られる点と元々ラップスティールギターに使われるピックアップが流用されていたようで、どちらかと言えばボトルネック奏法に向いているギターでしょうか。
諸事情により一時米軍空挺部隊に入隊していたジミですが、その時期にはDanelectroの3012を使用し軍内バンドで演奏していました。兵隊服姿でこのギターを構えている写真も残っています。
Danelectro 3012
ジミが使用していたのはピックガードがコントロール部手前までのタイプだったと思われます。
ジミー・ペイジの使用で有名な3021と同じボディー形状ですがジミ・ヘンドリックスが使用していた3012はブロンズカラーで1ピックアップのシンプルな構造です。
1ピックアップなのにセレクターが付いておりトーンカット等が選択できる仕様のようです。
訓練中のケガにより軍を除隊となったジミは様々なアーティストのバックバンドギタリストとして本格的にギターで稼ぐ道に進みます。
リトル・リチャード、アイズレー・ブラザーズ、カーティス・ナイト等のバックバンドで演奏し腕に磨きをかけていましたが、当時使用していたギターはフェンダーですがストラトではなくDuo Sonicでした。
FENDER Duo-Sonic
Duo Sonicは低価格版として販売されていたので、まだ駆け出しで経済的に苦しいジミにとっても入手しやすかったのでしょう。
ある程度活動も軌道に乗った頃にはFender Jazzmasterも使用するようになります。
この時期の使用アンプとしてはFender Twin Reverbを使っているのがステージ写真からも判別できます。他にSupro Thunderboltを使う場合もあったようです。
66年になるとThe Rolling StonesのSatisfactionのファズサウンドで有名なMaestro FZ-1 Fuzztoneも実験的に取り入れていたようです。
バックバンド時代の機材構成イメージ
当時はまだバックバンドギタリストだったのでジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス以降のあのド派手なギターサウンドのようにFUZZ Toneを使う事は出来なかったでしょうが、Fender製ギターにFenderアンプという当時のオーソドックスなサウンドにもっとオリジナリティを加えようという様子が垣間見えます。
新しいテクノロジーへの探求心が深く時間があれば楽器屋で様々なギターや新作の機材を試していたようで、この頃の試行錯誤が後のサウンドの基礎となっていったのだと思われます。
この後、才能を見出され当時ロックの先駆的シーンで活況だったイギリス、ロンドンへ渡り自身のバンドとしてデビューします。
ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス結成~
プロのマネージメントが付いたことにより機材もパワーアップします。
ここからギターはお馴染みのストラトキャスターになりアーミングプレイを含む多彩なパフォーマンスを生み出すことになります。
ファーストアルバム以前のライブでは既にMarshallアンプ 1959 Super LeadとArbiter Fuzz Faceも使用していたようです。
そのためファーストアルバムのレコーディングでもこれらの組み合わせがメインとして使用されたと思われます。
さらにもう1台、この時期に出会ったエンジニアのロジャー・メイヤー制作のオクターブ・ファズOctaviaもPurple Hazeのギターソロで使用されました。
この時のOctaviaはプロトタイプで先述のMaestro FZ-1のような筐体がケースとして使われていました。
初期octavia
OctaviaはPurple Hazeのレコーディングでのみの使用でライブには持ち込まれていなかったようです。まだ実験的な使用だったのでしょう。
その後VOX WAHペダルやHONEY Uni-Vibeなども加わっていきジミの使用機材として有名なものが出そろっていきます。
ウッドストック・フェス前後~
キャリアの総合的なエフェクター配置を見てみましょう。ジミヘンのエフェクターセッティングはウッドストックのライブ映像などを元に解析がされ図のような配列が定説のようです。
まずジミのサウンドの要となるワウとFuzz Faceですが、通常だとこの順番で接続した場合上手く機能しなかったり発振する場合も有ります。
おそらくワウにバッファーが組み込まれていたかファズの方が改造されていた等の説があります。Uni-Vibeのバッファーを利用していた説もありますが、その場合配列が変わってくるので定かではありません。どちらにしてもジミヘンサウンドを目指す場合はワウとファズの間にバッファーを挟めば近いサウンドが得られると思われます。
また、別の説では時期によりワウ使用時はファズはOFFでアンプの歪みのみであり、ワウを切ってからファズをONにしたりと使い分けていたとも言われています。あくまで推論ですのでジミヘンサウンドに近づけたい場合は実際にこれらのパターンを試してみたり探ってみましょう。
このワウファズの次に来るのがUni-Vibeですがこのエフェクターは現在のモジュレーション系ペダルの原型のような音を揺らす効果のあるエフェクターです。HONEY(のちのShin-ei)という日本のメーカーの製品です。
もとはレスリースピーカーのようなフェイズ効果を狙ったもののようですが揺れもの系の元祖ならではの独特のサウンドがあり、今でも復刻モデルが作られるほどです。付属のエクスプレッションペダルで揺れをコントロール出来ることも画期的です。
ジミのサウンドを再現するには必須アイテムですがオリジナルモデルは滅多に出回らないでしょうし価格も相当なはずです。やはり復刻モデルで代用するのが現実的といえるでしょうか。
ライブでは比較的シンプルな機材のみである点も印象的です。
ダイレクトなフィーリングとダイナミックな表現を重視していたのでしょう。
しかし、スタジオ版のサウンドを聴くとこれら以外にもJIMI HENDRIXは多くの機材を使っていたハズです。今後も追加してご紹介いたします。
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