アーティストペダルボード研究、第4回はクラプトン、ジミー・ペイジとつづけばやはり3大ギタリストのもう一人ジェフ・ベックですね。
ジェフベックと言えばフィードバック奏法や一瞬閃光がほとばしるようなスリリングなリードプレイ、甘く柔らかなトーンかと思えば突如金属のような硬い音を出したり、高速のシーケンスリックを荒々しくも軽快に弾きこなし、さらには普通では出せないようなどうやって弾いているんだろう?と思わせるトリッキーで奇想天外なプレイが印象的です。
また、突拍子もないプレイだけでなく、ジャズやフュージョン系のミュージシャンと共演するなど音楽的な素養に裏付けられたその表現力の幅広さはまるで歌声のようだと言われ数多くのミュージシャンからロック界最高のギタリストとリスペクトされています。
そんなジェフベックのサウンドの変遷を機材面からみていきたいと思います。
ローカルバンド時代
ジェフベックは学生時代のバンド、ナイトシフトでローカルクラブにレギュラー出演してギャラをもらうなど既に頭角を現しはじめていましたが、このころ出会ったのがあのジミーペイジでした。セッションギタリストとして仕事をしていたジミーの紹介でジェフもレコーディングの仕事を数曲行いました。
この時代ギターを弾き始めた頃からジェフ自身の憧れであった白いテレキャスターを入手しメインで使用していました。このテレキャスターが前回ご紹介したように後にジミーペイジにゆずり渡しミラーテレ、ドラゴンテレとなる一本です。
独自のプレイを追求するジェフベックにはセッションギタリストとしての仕事は定着しなかったようですがジミー・ペイジとの繋がりでトライデンツというバンドを結成し暫くはこちらをメインに活動していきます。
ヤードバーズ加入
この時期ビートルズ、ストーンズに続きエリック・クラプトン在籍のヤードバーズが人気を集めますが音楽性の違いから看板ギタリストのクラプトンが脱退。ヤードバーズのメンバー共通の知人でもあるジミーペイジにバンド加入を打診しますがセッションの仕事で多忙のためペイジは自身に代わってベックをヤードバーズに紹介します。スリリングなジェフのギタープレイを聴いたヤードバーズのメンバーは即加入を決定しました。
ヤードバーズの既存メンバーを魅了したジェフのフィードバック奏法やスリリングなプレイを実現するためのマテリアル、テレキャスターと当時定番であったアンプVOX AC30、そのVOXをブーストするトーンベンダーの組み合わせはトライデンツ時代に既に確立されていたようです。
当時のアンプでは単体で歪みを作るのは難しかったためブースターでアンプをドライブする手法が取り入れられ始めた時代でした。RangemasterやFuzz Faceなどを使用するアーティストも有名ですが、ジェフベックがトーンベンダーを使うようになったのはジミーペイジの影響もあるかもしれません。
- Guitar
- Fender Telecaster
- Pedal
- TONE BENDER MK.1
- Amplifer
- VOX AC30
クラプトン脱退により残されていたレコーディングにもこれらの機材をメインに収録されたと思われます。
ヤードバーズ加入直後のこの時期ウォーカー・ブラザーズのジョン・ウォーカーとのセッションの機会があり、彼が弾いていたフロントピックアップの無いフェンダー・エスクワイヤに一目ぼれしたのか75ポンドほどで譲ってもらったようです。
元々白のピックガードを黒に交換、ストラトの様に肘のあたる部分と裏側を削るコンター加工が施されています。
このギターがメインになったことによって、それまで使っていたあのテレキャスターはジミー・ペイジが使用していくことになります。
66年の4月頃からヤードバーズは本格的なスタジオ・アルバムとしては初となるロジャー・ザ・エンジニアのレコーディングを行いますが、この時使用された機材も前回のレコーディングと同様トーンベンダーMK1とVOXの組み合わせにギターは新たに入手した先ほどのフェンダー・エスクワイヤというラインナップをメインに行われたと思われます。
ただしギターはROGER THE ENGINEERツアー時と思われる写真によるとサンバーストで黒色ピックガードのレスポールも使用している事から、このギターも使われたかもしれません。
このレスポールは後に破損の修理など度々手が加えられていきます。
この写真での足元にはTONE BENDER MK1が確認できるためレコーディングもMK1である可能性が高いと思われます。
アンプはこの頃になるとステージでVOX AC100 Super Beatleが見られるようになります。(※写真は近年復刻されたミニアンプのものです。)AC30も定番アンプであるためレコーディングでは使用されたかもしれません。
- Guitar
- Fender Esquire
- Gibson Les Paul Standerd Sunburst①
- Pedal
- TONE BENDER MK.1
- Amplifer
- VOX AC100 Super Beatle
- VOX AC30
ROGER THE ENGINEERツアー開始直後ベースのポール・サミュエル・スミスがバンドを脱退。ライブのスケジュールも差し迫っていたためジェフの提案でジミー・ペイジにベーシストとしての加入を打診します。前回はスタジオミュージシャンとしての仕事を優先させるため断っていたペイジでしたが、今回はセッションマンとしての仕事とは別に新たなバンドの構想を抱いていた時期でもありジミーペイジはヤードバーズに加入することにしました。
ジミーペイジがベース担当時期のライブ写真ではジェフベックはエスクワイヤは勿論先ほどのサンバーストのレスポール、足元はこのころになるとMK1ではなくトーンベンダーMK2が確認できます。
- Guitar
- Fender Esquire
- Gibson Les Paul Standerd Sunburst①
- Pedal
- TONE BENDER MK.II
- Amplifer
- VOX AC100 Super Beatle
- VOX AC30
その後ジミー・ペイジもギターを担当しジェフ・ベックとのツインリードという強力なラインナップで更に人気を博したヤードバーズですがバンドとのツアーに疲れ果てたベックはヤードバーズを脱退します。ヤードバーズはその後ジミー・ペイジ中心として引き継がれていきました。
第1期JEFF BECK GROUP
ヤードバーズを脱退したジェフ・ベックですが新たなマネジメント契約の下、不本意ながらポップソングを発表するなどしていました。しかし、ジェフがやりたかったのはクラプトンが結成したCREAMのようなハードな本格的ロックバンドでした。そこで以前から気になっていたボーカリスト、ロッド・シュチュワートに自ら新バンド結成を打診、さらに知り合いのメンバーを加えて(ロン・ウッドがベースとして加入)Jeff Beck Groupとして活動を開始します。
ヤードバーズ時代からレスポールを使用し始めていたジェフベックですが、それとは別に虎目の入ったサンバーストのレスポールもJeff Beck Group開始から使うようになりました。
またヤードバーズ時代から使用していたLes Paul Standerd①は破損修理の際ボディー表面の塗装をはがしてナチュラルフィニッシュとなりました。
アンプは大音量化時代の真っただ中、ジェフもMarshall100wスーパーリードを使い始めます。レスポール+マーシャルはブルースブレイカーズ時代のクラプトンの影響を感じさせます。アンプはマーシャルのみならずフェンダーやオレンジ、サンなども使用しており様々なサウンドを追求していたようです。
足元のペダル類はこの時期Marshall SUPA Fuzzが使われていたという説もありますがSUPA FuzzはTONE BENDER MK2と中身が同じOEM供給品であるため歪みペダルはヤードバーズ在籍末期と同じ系統を引き続き使用していたと言っていいでしょう。この時期になるとさらにワウペダル(JENのCry Baby)を使い始めています。この後の’72年のBeat Club出演の際の映像から恐らくワウペダル➡トーンベンダーの順だと思われます。
- Guitar
- Gibson Les Paul Standerd① Natural Finish
- Gibson Les Paul Standerd sunburst②
- Pedal
- TONE BENDER MK.II (Marshall SUPA FUZZ)
- Amplifer
- Marshall 1959 Super Lead
Jeff Beck Group活動開始からファーストアルバムのレコーディングとその後のツアーはこれらの機材がメインに使われたと思われます。
さらにセカンドアルバムBeck Olaレコーディングからは、のちにジェフ・ベックのトレードマークなるストラトキャスターを数本導入しトレモロ使ったプレイも聴かれるようになりました。よく使用されていたストラトは塗装を剥がしたアルダー製と思われるボディーにカッタウェイ下側部分のピックガードがカットされている通称フランケンストラトと言われるものです。
ピックガードがカットされているのは何かスイッチが付いているなどの説もありますが詳細は不明のようです。このギターは72年、第2期ジェフ・ベック・グループでのスタジオライブの映像で見ることができますが、この時はメイプル指板のネックだったのに対して別の写真では同じボディーにローズウッド指板でラージヘッドのネックが取り付けられていたりと度々ネックを交換していたようです。(いろんな年代のパーツが組み合わされていることからフランケンストラトの愛称のようです。)
さらにもう一本ボディ、ピックガード共にホワイトのストラトも使い始めていたようです。
これは後のWiredのアルバムジャケットのものだと言われています。フランケンストラトと同様に何度かネックが交換されているようです。ストラトの導入により、さらに多彩な表現を可能にしていったと言えるでしょう。
この2枚目のアルバムBeck Olaレコーディング直前に一部メンバーが交代したり呼び戻されたりのゴタゴタでバンドの人間関係が悪化。何とかレコーディングとライブ活動はこなしますが活動休止をきっかに解散となってしまいました。このような経緯の中ジェフ・ベックはかねてからそのサウンドの虜になっていたバニラ・ファッジのベース、ティム・ボガードとドラムのカーマイン・アピスとCMソングのレコーディングをきっかけにお互い接近しました。新たなバンドのスタートかという矢先ジェフが交通事故で重傷を負ってしまい計画は頓挫してしまいました。ベックの事故がなければBBAはもっと早く結成されていたはずでした。
第2期JEFF BECK GROUP
第1期ジェフベックグループ活動停止から1年半以上たった71年前半、事故の傷も治りようやく次のバンド結成に向けて動き始めたところ、知人から凄いドラマーがいると紹介されセッションすることになりました。それが後に名ドラマーと言われるようになるコージー・パウエルでした。この二人を中心にオーディションや紹介によりメンバーを集め第2期Jeff Beck Groupがスタートしました。ジェフベック以外はまだ無名のミュージシャンでしたがメンバーの持ち味を活かしたそのサウンドは第1期のブルージーなスタイルからよりソウルミュージックに近いものになりました。
第2期JEFF BECK GROUPでのギターはBeck Olaレコーディングから使い始めたストラトがメインとなります。アンプは引き続きマーシャルがメインで(サンも時折使用)足元のペダルはトーンベンダーMK2やSUPA FUZZに代わってColor SoundのPower Boostが使用されるようになりました。(72年のスタジオライブBeat Clubの映像でオレンジ色の筐体Power Boostとワウペダルを確認することができます。)
- Guitar
- Fender Stratcaster (フランケンストラト)
- Fender Stratcaster white
- Pedal
- JEN Cry Baby
- COLORSOUND POWER BOOST
- Amplifer
- Marshall 1959 Super Lead
BECK,Bogert&Appice
ファーストアルバム、セカンドアルバムと立て続けにリリースしライブも大盛況で今までになく順調だった第2期Jeff Beck Groupでしたが当時大人気だったレッド・ツェッペリンやディープ・パープルなどのハードロック勢を意識していたようで、メンバーをいったん白紙にして以前セッションをしていたティム・ボガードとカーマイン・アピスに連絡を取ります。二人ともジェフの話に乗りベック、ボガード&アピス BBAの活動が数年越しに実現されたのでした。
BBA期になると、また新たな機材が見られるようになります。特に印象的なのは後にBlow By Blowのアルバムジャケットを飾る黒のレスポールでしょう。ハードロックへの回帰によりレスポールのような太い音が求められましたが、それまでのレスポール1本をまた破損させてしまい(Les Paul Standerd①ギブソンL-3のネックに交換)もう1本(Les Paul Standerd sunburst②)が盗難にあってしまい、新たに黒のレスポールを導入したのだと思われます。この黒のレスポールはブリッジの部分にテールピースが取り付けられており、元は54年製のゴールドトップだったものを黒に塗り替えたようです。実際には黒ではなくオックスブラッドと言われるダークブラウンとのことです。ペグはシャーラー製でピックアップは54年製ゴールドトップモデル標準のP-90からP.A.Fに交換されています。
2009年にギブソンから、このギターを完全復刻したJeff Beck 1954 Les Paul Oxblood VOSが限定100本で販売されましたが、そのスペックによるとボディーはマホガニーでトップ材にはメイプルが使われているようです。テールピースにはアルミニウムが使用されているとのことです。
BBA期、黒のレスポールと並んで印象的なのが『Superstition』で聴かれるギターが喋っているかのような効果を生み出すエフェクターです。これはトーキングモジュレータと言われるもので、仕組みとしては別接続の専用アンプから出力された音が外に漏れないようスピーカーにはジョーゴが被せられ、さらに接続されたホースによってギターの音を人の口の中へ響き渡らせます。その状態で口を動かしマイクで音を拾うことによってギターが喋っているような特殊な効果を作り出します。システムへの切り替えはスイッチャーか本体のスイッチを押せば切り替わるのか詳細は分からないところですが、トーキングモジュレーターのシステム一体は常にONで必要に応じてホースを口に加えマイクに近づくだけという説もあるようです。
歪みペダルにも変化があり、それまでのPOWER BOOSTから同じくColorsoundのより歪みに特化したOverdriverに代わっています。(BBAのライブ写真で黒い筐体が置かれているので恐らくこの辺りからオレンジのPower BoostからOverdriverに変更されたと思われます。’74年にTV番組に出演し機材を紹介した際はこの黒のOverdriverを使っていたので少なくともBlow By Blowの前には変更されているようです。)このColorsound Overdriverは78年の来日公演でも使用されていたことから、これ以降70年代末までOverdriverをメインに使っています。
アンプはBBA期ではSUNNのヘッドにユニボックスのキャビネットという組み合わせが多く見られるようになりました。(第1期JEFF BECK GROUP時代にもSUNN製のアンプを一時使用していた経緯があります。)
当時のライブ写真からSUNNのcoliseum leadというアンプヘッドであると思われます。
- Guitar
- Gibson Les Paul OXblood(メイン)
- (Fender Stratcasterも時折使用)
- Pedal,effect
- JEN Cry Baby
- COLORSOUND Overdriver
- Talking Modulator
- Amplifer
- sunn coliseum lead+univox cabinet
BBAではアルバムを1枚出し、特にライブ活動では三人のコンビネーションは抜群で歴史的名盤と言われる初来日公演を収録したBBA Live in Japanでも、その凄さを感じさせます。ようやくクリームやツェッペリンと対等なスーパーバンドを結成できた訳ですが、ベースのティムとの性格の不一致やライブスケジュールが相次いでキャンセルされるなど不運も重なり自然消滅的に解散となってしまいました。
本来であればジェフが事故を起こさず’69年の時点でBBAが結成されていれば絶好のタイミングでしたが’73年の時点ではハードロックバンドは数多くあり新鮮さという点では遅きに失した感があったことと、ジェフの音楽的方向性がハードロック的なものから別なスタイルへ志向していたようで活動を継続する意欲は薄れていったようです。
BLOW BY BLOW~Wired
その後一時、地元のバンドUPPとの共演やレコーディングに参加するなどしましたが監修的なものでメインの活動ではありませんでした。
ジェフ・ベックが当時志向していたサウンドというのがジョン・マクラフリン率いるマハヴィシュヌ・オーケストラなどのジャズを基盤としたインストゥルメントサウンドでした。BBA期にメインボーカルの不在が弱みであったベックにとってインストミュージックに新たな可能性を見出したのだと思われます。そして煩わしい人間関係に左右されないようパーマネントなバンドとしてではなくJeff Beckソロとしてプロのスタジオミュージシャンを集めて活動していくことになりました。(第2期Jeff Beck Groupのキーボード、マックス・ミドルトンはJazzの影響をジェフに与えた重要な人物であり、この時から再び活動を共にします。)
そしてJeff Beckの代表作としてはもちろんロックギタリストのインストアルバムとして歴史に刻まれることとなるBLOW BY BLOWが発表されました。それまでの作風とは全く異なる、いわゆるフュージョン的なサウンドでロックギタリストのアプローチとしては当時かなり斬新であったことでしょう。
そのサウンドを実現するための機材にも新たなものが導入されていきます。まずメインのギターですがハードロックなサウンドであったBBA期の黒のレスポールは脇役的になり、より細かな表現が出来るストラトキャスターを使う機会が増えました。第2期ジェフベックグループ時代に使っていたストラトに加え新たに’62年製のものも導入されたようですがネックを度々交換しているようで、どれがどれか断定するのは難しい所です。
「哀しみの恋人達」で使用されてと言われているのが通称テレギブと言われているピックアップにリア、フロントともP.A.Fのハムバッカーを搭載したテレキャスターです。’60年製のボディーで元はローズウッド指板のネックを貼りメイプルにに交換したという事です。
BBA時代に使い始めたトーキングモジュレーターもBlow By Blowの楽曲で使われています。さらに新たなエフェクトとしてColorsoundのオクターブOctividerが楽曲『Thelonius』のイントロで使われています。歪みペダルは引き続きColorsoundのOverdriverです。
ペダル類が増えると接続順も気になってくるところです。オクターバーは音程を変化させるのでギターからの反応がダイレクトに伝わるようギター直後が一般的でワウペダルもこれまでの経緯から歪みペダルの前に置かれていたであろうことが想像できます。ワウペダルとオクターバーは同時には使用しないと思われるのでレコーディングでは個別に接続したりライブであっても、どちらがギター直後かは深く追求する必要はないかと思います。オクターブやワウなど補正類の後に歪みのOverdriverという順番が自然な感じがします。(あくまでも想像なので参考程度に)
アンプはこの時期Marshallのスーパーリードのヘッドにフェンダーデュアルショーマンのキャビネットという組み合わせが当時の写真やインタビューで確認できます。
- Guitar
- Fender Stratcaster(メイン)
- テレギブ(哀しみの恋人達レコーディングで使用)
- Gibson Les Paul OXblood(楽曲によっては使用)
- Pedal,effect
- COLORSOUND Octivider
- JEN Cry Baby
- COLORSOUND Overdriver
- Talking Modulator
- Amplifer
- Marshall 1959+Fender Dual Showman cabinet
Blow By Blowの評判もあり、ジャズ・フュージョン系ミュージシャンとの共演やレコーディングへの参加も多くなりました。この勢いでBlow By Blowの方向性をさらに推し進めた続編となるアルバムWIREDを製作し、発表されました。
このWIREDでも使用されるエフェクターがさらに増え、フランジャー(TYCOBRAHE PEDALFLANGER、楽曲『Blue Wind』で使用)やリングモジュレーターが登場します。これらの機材はWired参加ミュージシャン、ヤン・ハマーとのツアーでも足元に見ることができます。
その際の写真では配線が複雑で並んでいる通りの接続順なのか判りにくいのですがフランジャーは歪みの前に持ってくる方が効果的でOverdriverの前としましたが、この時点でのJan Hammerとのライブではフランジャーはまだ持ち込まれていなかったようです。リングモジュレーターは確認できますがこれもオクターバー同様音程を変化させるものなのでギターに近い位置だろうと思われます。ワウも含めこれらは前述のように同時にONすることは無いと思われるので順不同と考えます。これら補正ペダルの後に歪みのOverdriverだと想像します。
アンプはマーシャルのヘッドはそのままにキャビネットはユニボックス製のものを再び使う機会が増えたようです。キャビネットに関してはマーシャル統一で落ち着くことは無く80年代前半まで度々univoxを使用しているので試行錯誤していたようですね。
- Guitar
- Fender Stratcaster(メイン)
- Pedal,effect
- COLORSOUND Ring Modulator
- TYCOBRAHE PEDALFLANGER
- COLORSOUND Octivider
- JEN Cry Baby
- COLORSOUND Overdriver
- Talking Modulator
- Amplifer
- Marshall 1959+univox cabinet
JEFF BECK with STANLEY CLARKE
ソロとして様々なミュージシャン集団と共演するスタイルになっていたベックはヤン・ハマーグループとのツアーの次は以前からベックが敬愛し、そのレコーディングにも参加した経緯のある凄腕ベーシスト、スタンリー・クラークとの共演となりました。
この共演は来日公演からのスタートとなりますが使用するギターには、これまでに無かったような斬新なギターを2本ほど取り入れています。その内の1本目がシェクターアッセンブリを搭載したホワイトボディーに黒のピックガードのストラトです。
通常のストラトキャスターのピックアップセレクターと違いピックアップごとに計3つのスイッチがそれぞれ独立して付いておりネック側のスイッチがフロントとセンターのピックアップによるハムバッカー効果のON/OFFスイッチ。センターのスイッチがフロント/センターのピックアップセレクト。ブリッジ側のスイッチがリアピックアップのON/OFFと逆相への切り替えスイッチになっていたようです。
もう1本はローランド製のギターシンセサイザーGR-500/GS-500です。一部曲のイントロのみでの使用だったようですが80年代目前で機材のテクノロジーも進化しており新たなサウンドを求めていた事がうかがえます。
この来日公演での機材や足元のペダル類が写真に収められています。資料によると歪みペダルは以前から引き続きColorsoundのOverdriderでVol.ペダルが接続されているようです。Overdriverは本体でLEVEL調節ができないため導入したと思われます。
Wiredでも使われたペダルフランジャーや信号を切り替えるA/Bボックスが見られます。A/B BOXはマーシャルの3段済みが2セット確認できるのでアンプを切り替えていたのかGS-500のシンセサイザー音源用のスイッチなのか判りかねるところです。
以前見られたオクターバーやリングモジュレーターが見られませんが選曲により使用する機会が無かったためでしょうか。自身の楽曲だけでなくスタンリー・クラークの曲も演奏するため機材を絞っていたのか別の所に置かれていた可能性もあります。
アンプはこの時ヘッド、キャビネット共にマーシャルで統一されていました。
アンプヘッドの上にはローランドRE-201Space Echoが見られます。RE-201は1974年発売のアナログ・テープエコーです。現行のデジタル機器では出せない温かみのある独特の残響音が魅力で今も愛好家が多いようです。リバーブなど12種類のモードがあるようですがジェフベックはディレイとして使っていたと思われます。
RE-201用のON/OFF用と思われるスイッチも足元に置かれていました。このスイッチに限らずペダル類のケースは何故か青色に塗装されていました。
ペダル類は下の図のように配置されていましたが、接続順に関しては写真ではOverdriverの右側にある出力からA/B BOXへ接続されているのは確認できますが、(ディレイはアンプヘッドの上にある事と空間系なのでアンプ直前で間違いないでしょう)その他は判別が難しかったり一部接続されていなかったりで本番中はどのように結線されていたかは不明なので以下の図の配線順はあくまでも想像です。
- Guitar
- Fender Stratcaster(メイン schecter parts搭載)
- Roland GS-500
- Pedal,effect
- TYCOBRAHE PEDALFLANGER
- ボリュームペダル
- COLORSOUND Overdriver
- A/B BOX
- Roland RE-201 Space Echo
- Amplifer
- Marshall 1959 Super Lead
THERE AND BACK
このスタンリー・クラークとのツアーバンドメンバーであるドラムのサイモン・フィリップスとキーボードのトニー・ハイマスにジェフ・ベックは新たな可能性を見出し次のアルバムThere And Backを製作します。前2作に引き続きインストアルバムですが若い2人に触発されロックな方向性を取り戻したサウンドとなりました。
There And Backツアーでも来日公演が行われ機材を取材した写真によるとギターは前回のスタンリー・クラークとの来日時に一部の公演で既にお披露目されていたようですがサンバーストボディでメイプルネックのヴィンテージストラトをメインに使用しました。
このストラトはスモール・フェイセズ等で活動していたスティーブ・マリオットから入手したものだということです。このほか愛用のテレギブなども使用されました。
足元のペダル類は前回来日時に近い構成ですが、歪みペダルがColorsoundのOverdriverからBOSS OD-1に代わっているのが最大のポイントでしょう。There And Backアルバム本作のリードギターのサウンドもファズの粗い質感では無く、艶やかで伸びやかなフィーリングが感じられるためレコーディングでもOD-1が使用されていたかもしれません。80年代に入りより現代的なサウンドへ移行していく過程をみることができます。またペダルボード外ではありますがMAXON OD-808も写真に収められておりテスト的に使用されたようです。
そのほかのペダル類はA/Bボックスやペダルフランジャー、オクターバーなどお馴染みのものです。ディレイはRoland RE-201からRE-501へより新しいものに代わっています。RE-501はよりノイズが少なくコーラスも追加された後継の上位機種ですが、やはりディレイをメインに使っていたようです。
ジェフは比較的長めのディレイタイムにリピート回数は3回程度に設定していたようです。RE-201もバックアップとして持ち込んでいます。
アンプはそれまでのスーパーリードに代わって比較的新しいものが使用されたようです。2台ほどアンプヘッドを確認できますがどちらもMarshallのロゴは外されていました。資料の記述が少なく写真も部分的で詳細が分かりにくいですが電源スイッチとスタンバイスイッチが現代のタイプなのとコントロールパネルの形状から、この翌年81年に発売されるJCM800シリーズの基礎になったJMPモデルのヘッドかJCM800の先行品の可能性もあります。
またアンプヘッド、RE-501共にキャビネットの上ではなくラック式のように別の場所に置かれていました。キャビネットは6発のスピーカーという事で再びユニボックスのようです。黒く見えるのはメッシュのカバーを取り付けているものと思われます。
ペダルの配置は下の図のようになっていました。配線も写真では判りづらいですがこれまでの経緯から以下のようではないかと思いますが下の図の接続順はあくまでも想像です。
- Guitar
- Fender Stratcaster sunburst(メイン)
- テレギブ
- Pedal,effect
- TYCOBRAHE PEDALFLANGER
- COLORSOUND Octivider
- BOSS OD-1
- Roland RE-501
- Amplifer
- Marshall JMP+univox Cabinet
さて、この先時代が進むにつれジェフの機材もより新しいものへと変化していきますが長いキャリアのJeff Beckです。最新機材も含めてまた次回お伝えしようと思います。お楽しみに!