Eagles/Hotel Californiaイントロ風サウンドメイク
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言わずと知れたEaglesの名曲Hotel Californiaのイントロ部分のサウンドメイク方法を研究してみたいと思います。イーグルスファンのみならず一般の人々の多くも一度は耳にしたことのあるであろう有名な曲ですが原曲では何本ものギターが重ねられています。
その中でもイントロ部分で特に印象的なのが12弦のアコースティックギターによるサウンドです。この曲をコピーするにあたっては是非ともこの12弦アコースティックギター、もしくは12弦エレクトリックギターのサウンドが欲しいところです。
再現方法
もちろん、より原曲に忠実なサウンドでコピーを目指す場合は12弦アコースティックギターか12弦エレクトリックを導入するのがベストではありますが出番が限られているギターのためどちらも所有していないという方も多いのではないかと思います。
そこでエフェクターを駆使して通常の6弦エレクトリックギターで手軽にホテルカリフォルニアのイントロサウンドを再現できるよう使用機種とセッティング方法を研究してみようと思います。
6弦エレクトリックで12弦アコースティックのサウンドをエフェクターで表現するという方針ですが、当サイトのエフェクター基礎講座でも既に「12弦ギターを再現したセッティング」を解説しています。今回はこれを応用してさらにアコースティックの雰囲気も追加していきます。
本家EaglesのHotel Californiaでの12弦担当ドン・フェルダーもライブではエレクトリックの12弦を使用していますし、バンド演奏時にアコースティックギターを別途用意する手間も省けます。
使用機材の設定と接続順
Hotel Californiaの12弦アコースティックサウンドを再現するのにベストな使用機材と構成は今回、次の図のようになりました。
接続順はギター➡コーラス➡ピッチシフター➡アコースティックシミュレータ➡アンプの順です。揺れものであるコーラスが先頭に来ていて通常のエフェクター接続のセオリーとは大きく異なります。
その理由はアコースティックシミュレータの存在です。コンプやリバーブなど別の機能も併せ持つ特殊なエフェクターなのでエフェクター基礎講座の「12弦ギターを再現したセッティング」と比べると重複するエフェクトを除外したり構成を見直す必要がありました。
今回使用したアコースティックシミュレーターをギター直後に接続した場合どうしてもピッチシフターのエフェクトが不自然になってしまうためトライandエラーで設定と接続順と試した結果、図のような接続順がベストとなりました。ただし、機種が違えば接続位置を変えたほうが上手く機能する可能性もあります。上記の接続順でうまく再現できない場合はアコースティックシミュレータの接続位置を変えてみましょう。
機材ごとの詳細設定
それでは各使用機材と設定方法を細かく見ていきましょう。
①ギター
原曲に近い雰囲気を出すには6弦のアコースティックギターでもよいのですが、ここではバンドでの演奏とエフェクターの使用を想定しているためエレクトリックギターを使ってサウンドメイクを進めました。
使用するエレクトリックギターですが今回はドン・フェルダーがライブでギブソンダブルネックの12弦を使っていることからハムバッカー搭載の6弦SGを使って音作りをしました。
使用するアコースティックシミュレーターとの相性もあると思いますのでシングルコイルのギター、テレキャスターやストラトはもちろん手持ちのギターやご自身がメインで使っているギターで微調節していただければ十分雰囲気は出せるかと思います。ハムバッカー搭載のギブソン系にこだわる必要はありません。
今回はフロントピックアップで音作りを進めましたがアコースティックシミュレータとの相性によってはリア(ブリッジ)側のピックアップのほうがアコースティックサウンドをうまく再現できる場合もあるようです。ここは使用機材によって相性の良いほうを選択してください。
②コーラス
アコースティックサウンドだけを再現するのであれば厳密にはコーラスは必需品というわけでは無いのですが原曲のイントロでは揺れ物のエフェクトがかかっている感じがします。
おそらくスタジオ機材を使ってミックス前に後掛けでエフェクトをかけたものと思われますがバンド演奏で原曲の雰囲気を出したい場合はコーラスを使うとかなり近い雰囲気が出せると思います。12弦ギターの雰囲気を出すのにもコーラスは最適なエフェクトです。
今回も当SMALLGARAGE製のコーラスCHR-SR1を使いましたが設定値などは別機種でも参考にしていただけるかと思います。
設定のコツはあくまでも薄くコーラスをかけることです。
この後に接続するピッチシフターでオクターブ上の音を加えるためここでエフェクトを強くかけすぎると音程のピッチが安定せず気持ちの悪いエフェクトになってしまいます。
具体的な設定値ですがCHR-SR1ではDEPTH(エフェクトの強さ)を20%、SPEED(揺れの速さ)も20%と揺れをかなりゆっくり、かつ薄くしています。
別機種のコーラスの場合は揺れの速さ、周期を1250msecを目安に設定しましょう。(揺れの山の頂点から次の山の頂点をBPM=48ほどを目安に設定)
③ピッチシフター
エフェクター基礎講座の「12弦ギターを再現したセッティング」でも解説しているように12弦ギターを再現するためにピッチシフターなどを使ってオクターブ上の音を重ね複弦効果を狙います。
1オクターブ上の音を重ねる機材はオクターバーやピッチシフター、ハーモナイザーなどいくつかありますが機種によってコンセプトや設定項目に違いがあり具体的なパラメータ数値は一概には説明が難しいのですが共通して言えるポイントはやはり、あくまでもエフェクトは薄くかけるということです。
まずはピッチシフター等で原音に1オクターブ上の音をミックスするよう設定してください。ハーモナイザーなど曲のKEYを設定する場合はホテル・カリフォルニア原曲と同じKEYであればKEY=Dメジャー(Bm)に設定しましょう。
今回使用した機種ではエフェクトレベルを5%とほとんど最小値に近い値に設定しました。これ以上エフェクトレベルを上げすぎると音程のピッチが狂ったようなサウンドになってしまいます。ただ機種によってはエフェクトレベルをここまで下げる必要のないものや強くしても安定したエフェクトをかけられるものもあるかもしれません。各自オクターブ上の音が上手くミックスできるレベルを探ってみてください。
④アコースティックシミュレーター
エレクトリックギターでアコースティックギターを再現するのであれば是非とも使用したいエフェクターです。アコースティックシミュレーターは特に機種によって設定項目に違いが多数あるかと思いますがご自身の使用する機種に照らし合わせて参考にしていただければと思います。
アコースティックシミュレータ参考機種
設定のコツですが今回使用したアコースティックシミュレータに限らず多くは、いくつかサウンドキャラクターのモードを選択できるかと思います。あくまでシミュレータのため使用条件によりアコースティックサウンドを上手く再現できないモードもあるでしょう。消去法で使えるモードを選択する形がベストかと思います。お使いのギター、ピックアップと相性の良いアコースティックギターを最も再現できるモードを選びましょう。
リバーブ機能を搭載している機種も多いかと思いますが、あまりワザとらしくならないよう低めの設定値にしましょう。今回リバーブは20%に設定しました。
そのほかピッキングのアタック感やボディーの鳴りの再現度を調節する項目がある場合は先に接続しているピッチシフター等との兼ね合い、12弦サウンドの再現度を確認しながら調節します。今回の使用したアコースティックシミュレータではその他設定項目はフラット50%にすると丁度よい感じになりましたが機種によって個別に設定値を探るのが良いかと思われます。
LEVEL設定ができる場合は全体の音量とエフェクトのかかり具合を確認しながら設定しましょう。音量によってコーラスやピッチシフター等が不自然に目立ってしまう場合や逆に不鮮明になってしまう場合があります。最適な音量が見つかったら最終的な音量はアンプ側で調節するのがベストです。今回はLEVELを50%に設定しました。
⑤使用アンプ
おすすめのアンプですがバンド演奏などではJC-120などクリーンサウンドが得意なアンプがよいでしょう。アコースティックサウンドを再現するため個性の強いアンプよりはクセの少ないソリッドステートのアンプのほうがアコースティックサウンドを再現しやすいかと思います。
アンプ設定の目安ですがまずは歪まないようGAIN等がある場合は音が出る最小限の値に設定しましょう。
アコースティックシミュレーターにイコライザーがある場合はそちらをメインに音色を設定しアコースティックシミュレータのサウンドを損なわないよう微調節する方向です。
アンプのイコライザー類をフラットに設定してMiddleを少し削るイメージです。アンプの機種によってフラットの値が違うため各自お使いのアンプの特性を確認しておきましょう。
アンプによってはフラットだとアコースティックサウンドが上手く出せないという場合は実際に音を出しながら独自の設定を探っていく作業になります。
セッティング全体図
ここまでの解説、接続順と設定値をまとめたリストです。↓
セッティングリスト①
ギターアンプ(クリーン)設定
- GAIN ~10%
- TREBLE 50%
- MIDDLE ~30%~
- BASS 50%
ACシミュレータ設定
お好みのモード
- Reverb 20%
- LEVEL 50%
ピッチシフター設定
+1オクターブ
- Effect音量 5%
- DRY(原音) 100%
コーラス設定
- DEPTH 20%
- SPEED 20%
- MIX 100%(未使用)
ギター設定
Pickup Position
- Front
Volume
- 100%
エフェクター基礎講座の「12弦ギターを再現したセッティング」ではダブリング効果を狙ってディレイを使用していましたがアコースティックシミュレータを使う場合はディレイを加えると少し過剰な感じがしました。そのため今回ディレイは除外しました。
アコースティックシミュレータがある場合はピッチシフターだけで12弦サウンドを再現するほうが無難なようです。
エフェクターの数を減らしたほうが自然な感じに仕上がる一例と言えるでしょうか。
12弦エレクトリックギターをお持ちの場合
もし12弦のエレクトリックギターをお持ちであればピッチシフター系のエフェクトも必要ありませんので除外してコーラスとアコースティックシミュレーターだけでHotel Californiaのイントロ風サウンドを再現できます。
セッティングリスト②
ギターアンプ(クリーン)設定
- GAIN ~10%
- TREBLE 50%
- MIDDLE ~30%~
- BASS 50%
ACシミュレータ設定
お好みのモード
- Reverb 20%
- LEVEL 50%
コーラス設定
- DEPTH 20%
- SPEED 20%
- MIX 100%(未使用)
ギター設定
Pickup Position
- Front
Volume
- 100%
ピッチシフターが無いためコーラスとアコースティックシミュレータは機種によって逆の接続順ほうが良いサウンドになるかもしれません。ここは両方試して気に入った方の接続順にしてください。
アコースティックシミュレーターがない場合
アコースティックシミュレーターをお持ちでなければ是非ともご購入を検討いただけるとよいのですが、エフェクターボードに余裕が無いなど事情がある場合もあるかと思います。ここではもっと手軽に手元にある定番機材でHotel Californiaのイントロの雰囲気を出す方法を考えてみましょう。
セッティング全体図(アコシミュを使わない場合)
アコースティックシミュレーターを使わない場合はアコギの再現ではなく12弦エレクトリックギター風の美しいクリーンサウンドを目指します。エフェクター基礎講座の「12弦ギターを再現したセッティング」そのままでも良いのですが、ここではホテルカリフォルニア風イントロ向けに微調節しました。
セッティングリスト③
ギターアンプ(クリーン)設定
- GAIN ~10%
- TREBLE ~70%~
- MIDDLE ~30%~
- BASS ~80%~
ディレイ設定
- DELAYtime 70ms
- REPEAT 2.5回
- E.LEVEL 80%
- DRY 100%
コンプレッサー設定
- ATTACK 50%
- SENS 40%
- OUTPUT 100%
- MIX 100%(未使用)
コーラス設定
- DEPTH 20%
- SPEED 20%
- MIX 100%(未使用)
ピッチシフター設定
+1オクターブ
- Effect音量 5%
- DRY(原音) 100%
ギター設定
Pickup Position
- Front
Volume
- 100%
アコースティックシミュレーターがないためコンプレッサーとディレイを代わりに追加しています。ピッチシフターを先頭に持ってきてギターの入力を検出しやすくします。
次にコーラスが来ますが基本はアコシミュ使用時と同じ設定で薄くエフェクトをかけます。
次のコンプレッサーですがピッキングのムラを減らし音を伸ばしてくれるのでクリーンサウンドでの音作りでは欠かせないエフェクトです。ただコンプも強くかけすぎると音が引っ込んでしまったりワザとらしいサウンドになってしまいます。当SMALLGAREGA製コンプレッサーCMP-SR1を例にするとコンプの強さを決めるSENSは40%、ATTACKは50%ほどがよいかと思います。
ディレイはダブリング効果を狙って設定しピッチシフターとともに12弦ギター風サウンドを演出します。こちらも当SMALLGARAGE製のディレイDLY-SR1を参考にするとREPEAT回数は少なめの2.5回、エフェクトレベルも原音が主体となるよう少し下げて80%に設定しています。
エフェクター基礎講座の「12弦ギターを再現したセッティング」ではディレイタイムを50msほどで解説しましたが使用機材によってはもう少し長めに設定したほうがダブリング効果がわかりやすくなります。今回は70msほどに設定しました。ほかの機種をお使いの場合は共通する項目に照らし合わせて参考にしてください。
上記の接続順のうちコーラスとコンプを入れ替えコンプ➡コーラス順にすると同じクリーンサウンドでももっとハッキリとした分離感のある音像へ変化します。(少し硬い音になります。)両方試して目的に応じて選択するとよいでしょう。
その他、演奏時のポイント
本家イーグルスのライブではダブルネックの12弦側にカポタストをしてイントロを、ノーマルネック側でギターソロを演奏しています。そのため通常の6弦ギターのみでカポを付けてのバンド演奏ではこの曲の見せ場であるラストのハモリのギターソロをどうするかという問題があります。
そこでボーカルもギターを弾くなどギターが3人いると都合がよいです。イントロ担当者はカポタストを付けたままバッキングに徹し、ラストのハモリのはリードギター2人が担当するのがベストかと思います。
しかし、ギターを弾ける人数が限られている場合も考えられます。その場合はギターソロ専用のギターを別に用意し歌メロの間に持ち換えるなどの方法もあるでしょう。ほかにも様々な方法はあるかと思いますが工夫してみて下さい。
今回はイントロのサウンドメイク方法のみでしたがギターソロでの音作りなどは今後の機会にまた特集したいと思います。
※上記の方法でオリジナルのサウンドを完全に再現できるものではありません。