今回はレッド・ツェッペリンのRock And Rollを取り上げてサウンドメイク方法を研究してみたいと思います。
この曲に限らず中期ツェッペリンのジミーペイジのギターサウンドはレスポール+マーシャルの組み合わせで70年代の王道的なサウンドを聴かせてくれます。ハードロックの基礎となるサウンドを再現してみましょう。
Rock And Roll風サウンド再現用機材と接続順
ギター
まずギターには是非ともレスポールもしくはギブソン系でハムバッカー(アクティブでは無く通常のパッシブタイプのハムバッカー)搭載のギターを用意したいところです。
アンプに関しては、この時期のジミーペイジはライブでのアンプとしてMarshall1959を主に使用していましたがレコーディングではファーストアルバム以降から愛用のスプロの可能性もあります。実際のレコーディングでどのアンプが使われたか知る術はありませんが、これらのアンプをエコープレックスのプリアンプやファズTone Benderなどでブーストしたサウンドではないかと想像します。
しかし、本人と同じ当時の機材をそろえるのは難しいところですので、現在も入手が容易な機材を使って再現していきます。
オーバードライブ
そこでギターの次に接続される歪みペダルには当SMALLGARAGE製オーバードライブDynamix Driverを用いました。Dynamix DriverのクリッピングモードのひとつMSモードはLEDを使ったクリッピングによりMarshallの歪みを参考にしており、どのようなアンプでも70年代の枯れた中音域のギターサウンドを再現するのに最適です。
今回はSMALLGARAGE Dynamix Driverを前提に設定値を解説していきますが、別の機種のオーバードライブをお使いの場合は各設定値をご自身の機材特性をイメージしながら参考にしていただければと思います。(TS系オーバードライブであれば再現度は近いかと思います。)
ディレイ
また、ギターソロ時には冒頭と終わり際にエコーによる面白い効果を加えているのでディレイを使って雰囲気を再現してみましょう。
こちらも当SMALLGARAGE製ディレイDLY-SR1を用いて設定を解説します。ディレイに関しても別機種をお使いの場合はご自身の機材に照らし合わせて各設定値を参考にして頂けるかと思います。
大まかな接続順はギター➡オーバードライブ➡ディレイ➡アンプとなっています。
セオリー通りオーバードライブの次にギターソロ時の効果音用ディレイを接続します。ただ、この接続順だとアンプの歪みに関してはディレイの後ろになります。しかし、アンプはそれほど歪まないオールドチューブアンプを想定しているためクランチ程度であればアンプの歪みによるディレイ音の濁りはほとんどないと言っていいでしょう。
もしろんアンプにセンドリターンがあればそちらにディレイを接続してアンプの歪みの後にディレイをかける方法もあります。
ギターソロでのディレイセッティング
はじめにギターソロ冒頭と終わり際に使われているディレイの設定から見ていきたいと思います。
まずディレイ音がちょうど1拍のタイミングになるようDELAYタイムを350ms前後に設定しておきます。(DLY-SR1のDELAYツマミで言えば55パーセントほど)
リピート回数は1.5回ほどの少なめです。(REPEATツマミ15パーセント)
EFFECTレベルも原音より少し下げておきます。(EFFECTツマミ80パーセント)
この設定で十分原曲のような雰囲気が出せるかと思います。
これ以上REPEAT回数を増やしたり、EFFECTを全開(原音と同じ音量)にしてしまうと減衰が不自然なうえリピート音が邪魔になったり次のフレーズに被さってしまうので、あまり派手に掛け過ぎなようにしましょう。原音成分はそのままなのでDRYつまみはMAXにしておきます。
ディレイの出番はギターソロの冒頭と終わりごろの僅かな箇所のみでONにします。それ以外ではOFFにしましょう。全編ONのままだとフレーズが重なって演奏しにくくなり、聴き手にも内容が伝わりません。
オーバードライブとアンプ、ギターの設定詳細
つづいて音作りの要となる歪サウンドの設定です。今回はオーバードライブとアンプの歪みとのバランスを取りながらサウンドメイクしていきますがソリッドアンプと真空管アンプとの違いやモデリングアンプやアンプシミュレーターを使った場合など使用するアンプの増幅方式や使用チャンネル、機種によってもセッティングが変わってきます。それぞれのパターンに合わせた解説をしていきます。
また、シンプルな機材構成でバッキング時とリードギター(ギターソロやオブリガードなど)との音の違いも出せるように設定していきたいと思います。
ギターの設定
ではまず、ギターの設定ですがどのようなアンプを使う場合でもリアピックアップを選択します。(ハムバッカー推奨)
モデリングアンプや真空管アンプを用いる場合など
アッテネータを使って、もしくはフルアップ近くまでマスターを上げて真空管アンプをナチュラルに歪ませる場合の設定方法を見ていきましょう。
モデリングアンプやアンプシミュレータをお使いの場合もチューブアンプのナチュラルな歪みを文字通り再現してくれるのでこちらをご覧ください。(アンプだけではあまり歪まないオールドチューブアンプを想定してください。モデリングやアンシミュの場合はそのようなモデルを選択しましょう。)
リードとバッキング時のサウンドを比べてみるとリードギターでは歪みの量が増え高音も鋭くなっているのでまずはリード時のサウンドを目安に設定していきます。
オーバードライブの設定
それでは始めにオーバードライブの設定ですが、まずはDynamix Driver本体上面トルグスイッチを右側へ押してクリッピングモードのMSモードを選択します。
これでマーシャルアンプらしいカラッとした乾いた質感のトーンを再現します。
さらにコントロール類ですがブースター的要素とオーバードライブとしての機能両方を兼ねるイメージでLEVEL、DRIVEともにセンター50パーセントに設定します。
アンプがフルアップでナチュラルに歪んでいる場合これ以上LEVELを上げてもドライブ感は増しますが音量は上がりません。またDriveも上げ過ぎるとバッキング時の歪みが多くなりすぎます。バランスを考えるとこのような設定がベストであるかと思います。
リードギターでは高音が鋭く出ています。TONEは全開にしてリードギター時の存在感を強調しましょう。
ただし、アンプとの相性で高音が強すぎたり線が細い音になってしまう場合は80パーセント付近まで上げ下げしながら調節してください。今回はパラレル機能は使わないのでMIXも全開です。
アンプの設定
つづいてアンプの設定ですがアンプの歪みは少な目のクランチサウンドに設定しておきます。GAINつまみがある場合は60パーセント程です。(あまり歪まないアンプの場合)
Dynamix Driver MSモードの音域特性を活かしつつ70年代的な中音域を強調したサウンドを目指します。
イコライザー類は今回使用したアンプではTreble60パーセント、Middle40パーセント、BASS50パーセントに設定しましたが、使用アンプの特性によって設定も異なるためご使用のアンプで実際に音を聴きながら設定しましょう。
バッキング時の設定
原曲の音源を聴いてみるとバッキング時はギターソロと比べさほど歪んでいないようです。バッキング時のサウンドを作るにはギターソロでのオーバードライブ、アンプの設定はそのままで、単純にギター側のボリュームを下げてみましょう。
ギターボリュームを下げるだけで歪みが少ない状態を作ることができます。バッキング時はボーカルの邪魔のならない程度を目安にボリュームを下げるのがコツです。ギター本体のボリュームを上げるだけでリード向けサウンドにも出来るシンプルな構成です。
真空管アンプ・モデリングアンプ使用時のサウンドメイクまとめ
アンプ設定
- GAIN 60%
- Treble 60%
- Middle 40%
- Bass 50%
ディレイ設定
- DelayTime 350ms
- REPEAT(Feedback) 1.5回
- Dry 100%(MAX)
- Effect LEVEL 80%
(ギターソロの一部でのみ使用)
オーバードライブ設定
- LEVEL 50%
- DRIVE 50%
- MIX 100%
- TONE 80%~100%
ギター設定
Pickup Position
- Bridge
Volume
- バッキング時~50%~
- リードギター 100%
Dynamix Driverは単体でも十分な歪みと音域特性を得ることができます。そこで、つづいては極力アンプの味付けに左右されないクリーンアンプ設定でのサウンドメイク方法をご紹介します。どんなアンプでも応用できるかと思うので参考にしてください。
ソリッドアンプや大型アンプのクリーンチャンネルを使う場合(エフェクターで歪ませる場合)
ソリッドアンプをクリーンに設定する場合や大型アンプのクリーンチャンネルを使用する場合はエフェクターで歪みを作っていきます。では設定方法をみていきます。
オーバードライブの設定
アンプは歪んでいないためDRIVEを80パーセント前後と多めに設定します。
しかし、アンプがクリーンで歪んでいない分まだ出力に余裕があります。そのためエフェクター側の設定によってはON/OFF時の音量差が大きくなってしまう事があります。DRIVE、LEVELどちらでも音量が変化するためバランスを取る必要があり、その分LEVELを下げます。
目指すのはペダルOFF時のクリーン音とペダルON時の歪みサウンドの音量に差が無いように設定することです。今回はLEVELを20パーセント前後まで下げましたがご自身の機材に合わせて調節してください。
TONEツマミはリードギター時に高音域を強調したいので全開にしたいところです。あまりに高音がきついと感じる場合や線の細い音になってしまう場合はTONEを95パーセントから80パーセントの間で調節しましょう。
MIXツマミは使わないので全開にしておきます。
アンプの設定
次はアンプの設定です。エフェクターで歪みサウンドを作っているのでアンプでは極力味付けをしない方向で設定したいところですが、どんなにクリーンに設定してもどうしてもアンプ固有の特性は出てしまうものです。基本的にはお使いのアンプで実際に音を出しながら調節していきましょう。
具体的な設定方法ですがまずクリーンチャンネルがあるアンプの場合はこちらを選択してください。チャンネルの選択が無いアンプの場合はGAINは10パーセント~20パーセント程度にしておいてマスターボリュームで音量を調節して歪みのないクリーンサウンドを作りましょう。
イコライザー類ですがアンプによってはフラットな設定がいい場合やtrebleを70パーセント前後でmiddleを80パーセント以上の多めに設定、BASSは50パーセント以下に削った中高音域を強調した設定のほうが雰囲気を出せるアンプもあり一概には言えないのでお使いのアンプごとに調節しましょう。
バッキング時の設定
バッキング時のサウンドは真空管アンプ・モデリングアンプ時の場合と同じくギター本体のVolume操作のみでシンプルに行いましょう。
エフェクターで歪ませる場合のサウンドメイクまとめ
アンプ設定
- クリーンチャンネルもしくは(GAIN 10%~20%)
- Treble 50%~70%
- Middle 50%~80%
- Bass 50%以下
ディレイ設定
- DelayTime 350ms
- REPEAT(Feedback) 1.5回
- Dry 100%(MAX)
- Effect LEVEL 80%
(ギターソロの一部でのみ使用)
オーバードライブ設定
- LEVEL ~20%~
- DRIVE 80%
- MIX 100%
- TONE 80%~100%
ギター設定
Pickup Position
- Bridge
Volume
- バッキング時~50%~
- リードギター 100%
以上ツェッペリンRock And Roll風サウンドメイク方法をお伝えしました。この曲に限らず初期から中期ZEPのベーシックなギターサウンドにも応用できるかと思います。ツェッペリンのコピーだけでなくこの時代のギタートーンを皆さんご自身のオリジナル作品にも取り入れる場合など参考になればと思います。
ジミーペイジ本人の使用機材に関してはアーティストペダルボード特集で詳しく解説していますのでこちらも是非ご覧ください。
*上記の設定でオリジナルのサウンドを完全に再現できるものではありません。