エフェクターのパラレル接続の基本
まずは、パラレル接続の基本を理解しましょう。パラレル接続とは並列接続のことです。並列接続の対義語が直列接続でシリーズ接続と呼ばれます。エフェクターは通常、直列接続が一般的でギターからアンプまでの本線のライン上に順番ずつ一列でエフェクターを接続していきます。
これに対しパラレル接続はギターからの本線を2本以上の支流に分岐させ平行させたライン上にエフェクターを接続し再び合流させます。(分岐させたまま別々のアンプを鳴らすこともできます。)
パラレル接続の効果
パラレル接続による効果ですが、まず直列接続だと一列に繋がれているため先にエフェクトが掛かった音に対して更に上乗せでエフェクトを掛けていくことになります。このため直列接続の場合はある程度セオリー通りにエフェクターを接続しないと音が濁ってしまったり思うような効果が出ないことがあります。
これに対しパラレル接続であればギターからの原音を直接、個別のエフェクターに分配できるため他のエフェクターのサウンドの影響を受けることなく純度の高いエフェクトを掛けることができます。
パラレルで接続する方法
本格的かつ、よりコンパクトにパラレル接続できるよう、SMALLGARAGEで開発したのが個々のエフェクター本体に直接センド・リターン端子を搭載したSRシリーズです。
エフェクター同士のパラレル接続が可能な"SRシリーズ"
それぞれのエフェクターにセンド・リターンがあるため、どの場所からでも分岐とミックスができギターサウンドの可能性をより一層広げてくれるでしょう。
また、既存のエフェクター同士も手軽にパラレル接続できるようにギターの信号を分岐させミックスできるブレンダーKB Blenderも開発しています。
パラレル接続のパターン
パラレル接続の有効な使い方として考えられる、いくつかのパターンをご紹介します。
2台のエフェクターをパラレル接続する
まず、最もシンプルな使い方としては2台のエフェクターだけをパラレルで接続する方法です。例えば歪みペダルとディレイをパラレルで接続すればディレイは歪まずクリーンなまま出力されるので歪みサウンドの中にクリーンな残響音が同居した音を出すことができます。次の動画はディレイDLY-SR1を用いてデイストーションとパラレル接続した例です。
つづいてリバーブRVB-SR1を使用してオーバードライブをパラレル接続。リバーブの残響音のみクリーンに出力されています。
新しいエフェクターの開発を体験できる
ほかにも歪みペダル同士など様々なパターンが考えられますが、このシンプルな2台の組み合わせを研究していくことで、パラレル接続を一つのブロックとしてみた場合、難しい回路を使うことなく新しいエフェクターの開発を手軽に行っているとも言えるのではないでしょうか。このようにパラレルとさらに直列の組み合わせでギターサウンドの可能性を広げていくことも魅力のひとつです。
エフェクターライン内にスポットでパラレルブロックを入れる
パラレル接続のブロックを単独で使ってもいいですが、気に入ったパラレルブロックをエフェクターのボード内に組み込んでも良いでしょう。
直列のラインとパラレル接続
通常の直列接続のラインとパラレル接続する方法もあります。この動画ではオクターブOCT-SR1をディレイとトレモロの直列接続のラインに対してパラレルで接続しています。
➡動画再生
複数台の2つのレーンをパラレル接続
2本のラインをパラレル接続するパターンも考えられます。このような場合SENDから出力した同じエフェクターのRETURNに戻す必要はありません。下の図の例ではアンプ直前のSEND,RETURNを搭載したSRシリーズのエフェクターのRETURNに戻してミックスしています。ボリュームペダルをそれぞれにセットすればラインセレクターのようにもできます。
2つのラインをバイパスする
もっとパラレル接続を有効活用するには2台のパラレル接続のブロック同士を連結する方法が考えられます。これなら上段と下段のラインを個別に使うだけでなく途中から一方のラインに合流させることもできそうです。上の図はあくまでもイメージです。実際にこれだけ繋ぐとスイッチの切り替えが大変かもしれません。さらにSRシリーズのエフェクターでも機種によりミックス方式が違います。特にトゥルーバイパス式の機種(Dynamix Driver SRとCHR-SR1)ではOFF時にSEND,RETURN間のエフェクターはカットされるのでONにしたままMIXツマミを操作する必要があります。これらを踏まえると以下の図のようにパラレルブロックの数は2~3ブロックまでが実用的と言えるでしょう。
実用的なパラレルブロックの連結
これだけでもかなりのエフェクトパターンが考えられます。次のようなパターンをみてみましょう。
※トゥルーバイパス式のものはOFF時にSEND、RETURN間のエフェクトがカットされてしまします。トゥルーバイパス式の場合はONにしたままMIXツマミの操作で信号経路を振り分けてください。
赤色の矢印が信号の経路を表します。このパターンAではパラレル接続したエフェクターは電源をOFFにして下段、直列部分のみの通常のエフェクトとなっています。
パターンBではギターの直後のパラレルブロックのON/OFFをそれぞれ入れ替えた直列繋ぎとなっています。
さらにアンプ直前のパラレルブロックのON/OFFを入れ替えれば両ブロックのSEND,RETURN間の上段部エフェクトのみとなりパターンAとは反対側のラインを使っていることになります。パターンAからパターンCへは4つのスイッチを切り替えるため結構大変です。次の曲への合間になら切り替えられそうです。
パターンDはパターンBとは逆にアンプの直前のブロックのON/OFFのみ入れ替えたパターンです。
両方のエフェクトをONにしてパラレル接続として使ったパターンです。両ブロックともパラレル接続として使ってます。
このほかにも片側のブロックのどちらかをOFFもしくは両方ともOFFの組み合わせで、さらに6つのパターンが考えられます。
応用編
これらのパターンを基本にもっとエフェクターを増やしたい場合は次のような接続も可能と言えます。
SEND,RETURN間に1台だけではなくエフェクターのラインを組み込んだものです。エフェクターが増えて複雑ですが、先ほどのパターンA~パターンE以降までと基本は同じ考え方になります。
ボリュームペダルを使うことでSEND,RETURN間のエフェクターラインを一度にカットしたり加えたりできるため一台ずつ切り替える手間を省けます。
2つのパラレルブロックの連結だけでかなりのエフェクトパターンを作ることが出来るはずなので色んなアイデアを盛り込んでみましょう。
揺れもの系、空間系ペダルをパラレルで積み上げる
揺れもの系、空間系を直列にして同時に鳴らした場合順番や組み合わせによっては効果がなかったり、おかしなエフェクトになる場合がありますがそれぞれをパラレルで接続すれば前後関係に影響されず今までにない音作りが出来るかもしれません。
上の図では空間系、揺れもの系そしてディストーションとコーラスの組み合わせの3段パラレルとなっています。この接続の場合コーラスにのみディストーションが掛かり他のラインは歪ませることなくエフェクトを掛けられます。
この他にもパラレルでエフェクトを掛けるには何通りかの方法があります。まず、一般的に知られているパラレル接続の方法はアンプのセンド、リターン端子のパラレルを使う方法です。ただし、この方法はプリアンプを直接迂回するわけではなく、アンプの歪みの後にエフェクターを設置する機能であるため直列接続に近いと言えます。
まだ他にも、ステレオアウトのあるエフェクターを使って分岐する方法やダイレクトアウト、ドライアウト端子を使って分岐する方法もありますが、これらの場合は分岐させた信号をミックスするのに別の機器を用いるかそれぞれ別のアンプを鳴らす必要があります。ラインセレクター、やスイッチャーにもパラレル接続の可能な機能を有するタイプもあるようです。
一通りパラレル接続の基本を解説しましたがエフェクター同士のパラレル接続はまだ未開発な部分が多いのでユーザーの皆様と一緒に発展させていくカテゴリーだと思っています。色んな接続方法を一緒に開発、研究していきましょう。
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